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 9・・・楽器を始める場合の危惧について、初心者が直面する問題について

2013-07-12
初心者が直面する問題について日々思っている事が記載されていたので抜粋します。

私は、本当に回り道しました。

http://artist.musicinfo.co.jp/~tkgksts/suggestions.html
抜粋

部活顧問の先生方への提言
ここでは、学校で吹奏楽部等の部活で指導をされている先生方へ、これまでの指導経験からよく目にしてきた部活動指導上の問題点と注意点をいくつか提言させて頂きたいと思います。

ご自身はトランペットや金管楽器を経験したことがない、管楽器すら経験したことがない、しかし現実には吹奏楽部を指導しなくてはならない、という先生方は少なくないと思います。それはとても大変な状況であり、授業や学級運営その他に加えて自分の専門外の指導をするという事は本当にご苦労の耐えないことと思います。しかしながら、そういったご苦労を承知の上で、どうしても先生方に知っておいて頂きたい注意点について、いくつか書かせて頂こうと思います。

特に、小学校・中学校で児童・生徒が初めてトランペットやコルネットを吹く機会となる部活動においては、不適切な指導が(先生方はそれが間違っているとはご存知ない場合が多い)、生徒たちの後の上達の可能性、ひいてはプロを志望した場合にその将来の可能性を大きく摘んでしまうことがありますので、ぜひご一読頂きたく思います。


ここに挙げる問題点と提言は、これまでの小中学校の部活動での外部講師の経験、小中学校の生徒の個人レッスン、高校生や大学生の個人レッスンを通じて多く見受けられたものです。
その中には、あまり意味をなさないのに伝統的に信じられている練習、という程度の問題から、その吹き方では決して上達できない(しかし生徒・指導者ともそれを知らない)、という極めて深刻なものまであります。

勤勉で、忍耐強く、上達しようという強い意志がありながらも、初期段階での悪い癖が(本人はそれが根本的に大きな問題となっていることを知らない)、その後の上達を強固に妨げている例が少なくありません。
トランペットの演奏における技術的な側面においては、音の発生、発音という本当に最初の段階が極めて重要であり、それは奏法の本質的部分であるために、初期段階で道を外れてしまうと、その後の演奏能力にどうしても越えられない限界を作り出すことになります。もちろん、それに気づいた時から矯正することは可能ですし、私自身もそうでした。しかしながら、その矯正には、膨大な時間と、生徒・教師両方にとっての忍耐強い観察と適切な練習が求められます。それは本当に大変な作業であり、途方もない回り道をすることになります。

小中学校で部活を頑張り、音楽の楽しみを知り(それは先生方のご指導の賜物です。)、もっとうまくなりたいと思うようになり、より高いレベルを目指した時、初めて自分の今までの吹き方では限界があることに気づくケースがあります。それが音楽大学に入学した後に訪れるような場合さえ、ないわけではありません。
それはとても惜しいことです。始めの段階で正しい指導を受ける機会に巡り合わなかった、ただそれによって、彼らのトランペットの上達や音楽のさらなる楽しみ、時にはプロフェッショナルへの道が、大きく阻まれるのです。
これは決して誇張した作り話ではありません。


日本には、学校・一般まで数多くの吹奏楽団体があり、その規模は世界的に見てもトップなのだそうです。今や欧米諸国が日本の吹奏楽のシステムから学ぼうとしています。それはこれまでの吹奏楽界の先達、そして現場の顧問の先生方の努力の歴史が築き上げてきた、他国の成し得なかった誇るべき成果の一つだと思います。
しかし同時に、非常に残念なことに、上に述べてきたような問題があることも事実です。もちろん、ある程度のレベルで演奏できて楽しめればそれでいい、というアマチュアとしての楽しみ方もあり、そこには何も問題はありません。ただ、それ以上のレベルに達したいと思った時、例えば音楽大学に行きたい、プロになりたい、と思った時に、初期段階での問題が知らずのうちに染み付いていて時すでに遅い、ということがあるのは本当に惜しいことです。そのようなことができるだけ減ることを心から願います。

さて、私が問題と感じているのは、以下の点です。

マウスピースの位置

■「マウスピースの位置がずれているから真ん中にしなさい」?

マウスピースを当てる位置は、厳密に唇の真ん中でなくても構いません。
真ん中より上下左右に少しずれるのは、何の問題もありません。これは、上下の唇の長さと形、歯並び、あごの作りによって決まります。真ん中で吹くことはもちろん可能ですが、多くの人の場合、少しずれた位置のほうが、息の流れと唇の振動を効率よく作り出すことができます。これは経験とともに本能的に位置が決まっていきます。中心よりずれている有名なトランペット奏者はたくさんいます。

実は、これはそれほど問題ではありません。問題なのは、次の点です。


■極めて深刻な問題となるマウスピースの当て方

ひとつだけ、絶対に避けなくてはならない当て方があります。

マウスピースを唇に当てた時に、上唇の赤い部分が外から見える状態(マウスピースより上にはみ出ている状態)は、絶対に避けなくてはなりません。

その位置にマウスピースを当てると、上唇のより内側の粘膜部分が表に出るようになり、そこは非常に柔らかいため、生徒は音が出しやすいように感じます。そしてそれを続けるようになります。
その状態でも、ある限られた範囲内では吹くことができます。しかし、ある程度以上の演奏はできませんし、何より、決して上達できません。音質が貧弱であるだけでなく、音域と耐久力の点で、大きな問題となります。音域は狭い範囲で限られ、粘膜部分は傷つきやすいため長時間の演奏はできません。音量も出ないでしょう。

このマウスピースの位置である程度経験を積んでしまうと、それが問題だとわかった時に矯正するのがとても大変な作業になってしまいます。
それは、0からやり直すというより、マイナスからの出発と言っても過言ではありません。なぜなら、一度習得した(間違った)感覚があるからです。新たな正しい感覚を育む過程で、新しい感覚と古い間違った感覚とは格闘します。マウスピースを唇に当てた瞬間、古い感覚が想起されるよう染み付いていますので、全くの初心者のようなまっさらな状態よりも、ひとつ大きな障害を抱えることになります。
もちろん、矯正は可能です。私自身もまさにそうでした。しかし、その過程は、決して易しいものではありません。本人と教師の長期にわたる忍耐(場合によっては数年)、適切な観察と練習が求められます。しかも本来それはなくて良かったはずの回り道です。

ですから、トランペットを始める段階で(多くの部活の場合5月でしょうか。)このことはよく注意をし、その後もし上唇が上にはみ出た吹き方をしている生徒がいたら、出来る限り早い段階でそれを本人に気づかせる必要があります。
早い段階で気づくことができれば、矯正はその分楽にできるようになります。毎日少しずつ、マウスピースを昨日より高い位置(鼻に近い方向)に当てるようにしていけば矯正されていきます。一度に位置を激変させるのではなく、毎日少しずつ移動させていくことで、古い感覚と格闘するのではなく、感覚を移行させていくことができます。

その当て方で数年すでに吹き続けてきた場合、矯正は慎重にならざるを得ません。矯正には時間がかかることが予想されますから、本番を控えている場合などは、とりあえず見過ごして何も言わず、そのまま吹かせることも現実的な選択としてはあります。
もしある程度時間を取ることができ、きちんと直したい、という場合は、一時的に演奏能力は下がることを覚悟の上、ある程度専門的な経験のある人の指導と観察のもとに矯正していく必要があります。


ベルの高さを揃える?

「ベルをもっと上げて!」「ベルの高さを揃えて!」という指導は、マーチング(やそれに準じる視覚的効果を狙う場合)でない限り、演奏上は悪影響と言わざるを得ません。

ベルの高さと音の良さに相関はありません。ある人にとっては、ほぼ直角がベストな高さであり、ある人にとっては、かなり下向きがベストな高さです。
より多くのプロ奏者の吹いている動画や写真をご覧下さい。ほぼ直角の奏者ももちろんいますし、ほとんど下を向いている奏者もいます。皆、自分に合った角度で吹いています。

楽器の角度を決める大きな要因は、あごと歯です。生まれつきの噛み合わせの状態と、歯の前後方向の向きに大きく影響されます(例えば、あくまで一般にですが、下顎が奥に引っ込んだ噛み合わせの人は、ベルが下向きになります)。これらは個人差があり、楽器の角度にも個人差が出ます。全員が全く同じ楽器の角度で演奏している姿というのは、専門家からすれば不自然です。
特に、角度を上げるがために、頭と背中が後ろにのけぞった姿勢で吹くことを強要されている生徒がいたら、かわいそうです。悪い姿勢のために呼吸機能を大幅に制限されながら吹いているのですから。

上半身を(特に後ろに)歪めることなく、そしてそれぞれのあごや歯の状態に合った楽器の角度を見つけるべきであり、全員が直角にベルを上げるという指導は、不適切と言えます。

腹筋運動?

「腹筋はしたほうがいいんですか?」とたまに聞かれますが…
いはゆる腹筋運動のトレーニングは、管楽器の演奏のためには必要ありません。「腹筋が割れる」という時の腹筋、つまり腹直筋は、管楽器演奏のためには柔軟でなければなりません。もう少し正確に言うならば、上半身の筋肉は全て柔軟であるべきです。決して硬い筋肉は必要でなく、むしろ、硬直した筋肉は管楽器演奏上は使い物になりません。
腹筋運動を練習に取り入れているプロ奏者や音楽大学はおそらく存在しないでしょう。

腹筋を締める、という発想は、息を強く流し込む、という考え方から来ていると思われますが、良い管楽器の奏法は、「息を押し込む」のではありません。
体を十分に柔軟にし、柔軟なまま息を吸い込み、体が自然にもつ弾性(もとに戻る力)を利用して、決して腹筋だけを締め上げるのではなく、上半身全体を協調させて息を流す、というのが良い呼吸の仕方と言えます。これは体を固くして息を押し出す、のではなく、体は柔軟なままリラックスして息が流れていく、というものです。これによって、音色、音域、耐久力等は飛躍的に改善されます。逆に、腹筋を締め上げて息を押し込んでいると、それでもある程度の演奏は可能ですが、音域や持久力は制限されます。

息を吐き出すのに必要な腹筋の力は、通常の生活と楽器の練習そのものによってすでに十分に得られています。それ以上にトレーニングをして筋肉を固くするような行為は、残念ながら逆効果です。

練習メニューに腹筋運動をする時間を設けているのであれば、それはストレッチ運動に切り替えるべきでしょう。
特に上半身を柔軟にするストレッチは、豊かな呼吸のために非常に有益です。

演奏(練習)時間と休憩、音域

トランペットの演奏は、唇や呼吸に関わる筋肉を非常に疲労させます。
どんなに熟練した奏者でも、連続演奏時間には限りがあります。特に経験が浅かったり、良い吹き方が身についていないうちは、効率の悪い吹き方ですので、唇に対する負担はかなり大きなものとなります。

■練習時間の配慮
そこで、トランペットを練習する時には練習時間に配慮が必要となります。
ひとつの目安があります。「吹いた分だけ休む。」例えば、15分吹いたら、15分休む。30分吹いたら30分休む。
現実には、全くその通りにはいかないかもしれませんが、これは非常に大事な心がけです。

休憩を取ることによって、唇に十分な休憩を与え、血液の循環を確保します。そうでないと、唇の組織には疲労がたまり続け、唇は硬くなり、振動しなくなっていきます。つまり音が出なくなっていきます。すると、焦った生徒は、何とか音を出そうと、マウスピースを唇に押し付けるようになっていきます(ほんの一時的にそれで音が出ます)。それはさらに唇を傷め、さらに振動しにくい状態を作り出し、状況を悪化させていきます。この悪循環に陥る前に、必ず休憩を取り、唇をできる限り新鮮な状態に保つ必要があるのです。
適度な休憩を取らないと、慢性的に唇が硬くなり音が出なくなり、調子をくずすことになりますし、さらに仮にこの悪循環が長期にわたって根性のままに続けられると、後述の「つぶれる」という悲劇を招きます。

トランペットの演奏というのは、例えば受験勉強のように、やればやるだけ良くなる、というものではありません。
上達できない理由に関する、示唆に富んだ言葉があります。「練習方法が間違っている。または正しい練習を、しすぎている。」つまり、間違った練習をしても上達できませんし、仮に正しい内容の練習をしていたとしても、連続した長時間の練習は、害となるのです。唇は疲労するからです(その疲労度合いは、良い吹き方であるほど少ないのですが)。
どのトランペット奏者にも、吹き続けられる限界点が、必ずあります。その限界までの距離は、演奏能力や経験に比例します。ただ、万人に共通するのは、その限界点を超えて演奏し続けると、その先には落下しかない、ということです。そして再び這い上がるには時間がかかる、ということです。言い換えれば、調子を崩し、演奏能力は下がり、取り戻すのに時間がかかる、ということです。


■音域の配慮
また、広い音域、特に高い音についても、配慮が必要です。
トランペットは高い音が華やかな楽器ですから、「高い音が出ないのは練習不足、もっとたくさん練習すれば出るはずだ」というのはわからないでもありません。しかし、高音は、苦労なしに自然に出すことができる一部の人を除いて、大半の人は、適切な練習なくしては、いくら練習をしてもすぐには出すことができるようになりません。
小中学生の場合は、「高いソ」くらいが一つの目安となると思います。これ以上の高音は(曲では実際のところ良く使われてはいますが)、ある程度の適切な基礎がなければ、無理矢理に出すしかなくなります。それは多くの場合マウスピースを押し付ける、という方法に陥ります。それが招く悪い結果は、上に述べた通りです。
例えばスウェアリンジェンの曲のような、学生のために書かれた吹奏楽のオリジナル曲にはトランペットに極端な高音が出てこないのは、こうした理由からなのです。

従って、もし現状として生徒が高音を苦手とするのであれば、高い音が頻発する曲はできるだけ避ける、または音を下げることを許す、1stのパートはできるだけローテーションする、という配慮が必要です。
そして、合奏中は、高音が続く箇所を繰り返し長時間吹かせることのないよう、気をつける必要があります。

「つぶれる」

最後に、「つぶれる」という現象について。
「つぶれる」とは、それまで上手く吹けていたのに、ある日突然全く吹けなくなる、という現象です。特に上のパートを長く任されてきた生徒に起きる現象です。

原因は、上記のように、長期にわたって無理のある吹き方を続け、唇に強い負荷をかけ続けすぎたことにあることが多いと思われます。適度な休憩を取らなかった、または高音を無理やりな吹き方で根性のままに吹き続けた、これが長い期間続くことで、本人も気づかないうちに唇は疲労から回復する時間を与えられず、ただ負荷をかけ続けられ、慢性的に疲労した状態となっていきます。そして音を出すための振動を起こせない状態にまで至ります。それは突然訪れます。
仮にそうなってしまったら、一度完全休養を取り、中音域から徐々にリハビリすることになります。これは状況の深刻さによっては容易ではないこともあります。
本人はそれまで根性で頑張ってきたわけですから、これはとても辛いことです。そうなってしまわないよう、指導側には配慮が求められます。