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放送大学は,教養学部を持つ通信制大学です.学士(教養),修士(学術),博士(学術)の学位を取得できます.講義はBS放送(231,232,531Ch),インターネットを使って行います.研究指導,研究活動の情報交換にもインターネット,TV会議などを使います.本部の所在地は千葉県の幕張です.

 どのような社会に生きたいのか

2020-01-26
教育格差 ー階層、地域、学歴ー (松岡亮二、 筑摩) を電子版 で読みました。新書もあります。両親の学歴、住む地域など社会経済的地位により、子供の学力に、本人の意思によらない格差があることがデータに基づき示されています。親や地域の違いで、子供が大卒になるとか、いわゆる偏差値の高い大学に進学するとかの結果に違いが出ているということになります。大変な労作で著者の情熱と苦労を克服するエネルギーには敬服します。昨年出版されましたが、すでにアマゾンでは多数の書評が寄せられています。概ね高評価で「これからの教育議論のスタンダードとなるべき」と言ったコメントもありました。一方批判的なコメントには、「矮小な提案と著者の自己発揚にとどまってしまった」というものもあります。私は現在の教育の分析に関しては感じていたことをデータに基づいて示してくれたという点で好意的、書きぶりはもう少し短くできたのではと思い、また最後の章だけは先のコメント同様自己発揚と感じてと批判的です。第7章「わたしたちはどのような社会を生きたいのか」には著者の提言が記されています。教師を目指す方、あるいは現役の教師の方に社会科学的な視点をもって教育に臨んでいただくような、具体策もあげています。
著者の提言が実現したとしてどのような社会が実現するのか考えてみました。現在のような学力、教育、学習成果を点数化して偏差値で人数分布を捉え、大卒は生涯収入が高いということにつなげて、社会人になったときの収入や地位が高いと上位にくる測り方で社会を見る限り、階層、格差自身は残ると思いました。もちろん、例えば上位のなかで3大都市圏在住や、両親大卒の比率が減るといった入れ替わりは起こります。著者の主張は、親の学歴や地域性により知らず知らずのうちに学力を伸ばす機会、サポート、結果としてここでいう上位に行く可能性を失うことがないようにしたいということだなと思いました。私は、収入や地位の高さで見る格差に引っ張られて、始めは著者はそれをなくした社会を実現したいというふうに読んでいたのですが、このブログを書きながら、誤りに気づき、理解が深まりました。今の社会をどう捉えるのか、どのような社会に生きたいのか、この問題には様々な視点、主張がありますね。