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近畿エリアの文化&ボランティア団体が書いたブログ一覧

前回のブログで、胆汁ミセル非結合型分率と食事の負の影響、についての論文を紹介しました。

https://www.c-sqr.net/c/pcfj/Circle_detailReport.html?report_id=431202

以下、2点ほど、この論文の「みどころ」を追加します。

メカニズムベースPeff

この論文で使用しているメカニズムベースPeff式では、Pappに対する(経験的)補正無しに、Faを予測できます。メカニズムベースPeff式では、各膜透過メカニズムや生理的条件、すなわち非攪拌水層、Paracellular、胆汁ミセル結合、ひだ・絨毛構造など、がモデルに組み込まれているので、補正は必要なくなります。本来、"Physiologically-Based" PKモデルは、経験的補正が無いのが理想です。(どうしても経験的補正を行う必要がある場合、PBPKに統計モデルを持ち込むことになりますので、統計モデルの手法に基づいて、凡化性能やモデル式の適応範囲(=内挿)を十分に考慮すべきです。)

薬物固有の胆汁ミセル分配係数Kbm値

この論文では、胆汁ミセルへの分配係数(の対数)log Kbmと、logPoctの間に良好な線形関係が認められます。このように「固有(intrinsic)」な物性値では、線形自由エネルギー関係(Linear free energy relationship)が得られる場合が多いです。このことは、SAR予測性の点からも、現象の理解の点からも、とても重要です。

胆汁ミセルに薬物が分配することで薬物のフリー分率(fu)が低下し、膜透過速度が低下することは、in vitroやrat in situ試験などでは以前から良く知られていました。しかし、これまで、この現象が臨床における食事の負の影響と相関するかについては不明でした。今回紹介する論文では、Caco-2における膜透過(Papp)速度の低下からの食事の負の影響の予測について検討しています。

Akiyama, Y., Ito, S., Fujita, T., & Sugano, K. (2020). Prediction of negative food effect induced by bile micelle binding on oral absorption of hydrophilic cationic drugs. European Journal of Pharmaceutical Sciences, 105543.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0928098720303316

食事の負の影響は、主に親水性塩基性薬物で顕著にみられることから、これらをモデル薬物としました。Blank FaSSIF, FaSSIF, FeSSIF(いずれもpH 6.5)にてPappを測定しました。
3級アミンについては食事の負の影響を定量的に予測できることが分かりました。また、単純なPapp比からの予測よりも、一度、胆汁ミセル分配係数(Kbm)に換算した後に理論モデルで計算する方が予測性が高いこともわかりました。一方で、4級アンモニウムについては、予測できませんでした。

胆汁ミセル結合の影響については、これまで、ほとんどの経口吸収モ..

塩基性薬物(フリー体)の経口吸収率(Fa)は胃内での溶出に大きく影響を受けます。そこで今回紹介する論文では、胃内での溶出を記述する簡単な式が導入されています(Fd式)。胃内での塩基性薬物(フリー体)の溶出を考える際には、溶出薬物による胃酸の中和を、溶解度(bulk pH)および溶出速度(surface pH)の両者について、計算に組み込む必要があります。これらを考慮することで、固有溶解度とpKaから胃内での溶出を予測し、既に検証済みの小腸吸収モデル(当ブログ”本当の予測性とは?”参照)と組み合わせることで塩基性薬物(フリー体)のFa予測に成功しています。また、同時にPPIやH2ブロッカーなどによる胃内pH変動がAUCに与える影響の予測にも成功しています。

Matsumura, N., Ono, A., Akiyama, Y., Fujita, T., Sugano, K. (2020). Bottom-Up Physiologically Based Oral Absorption Modeling of Free Weak Base Drugs. Pharmaceutics, 12(9), 844.
https://www.mdpi.com/1999-4923/12/9/844
(オープンアクセスです)

今回、食後の胃の時間平均pHは 2.7に設定されています。従来、食後の胃pHはpH5以上に上がるとされていました。確かに一時的にはpH5以上に上がるのですが、文献を精査してみると、食後の(遅い)胃排泄速度と比較して、pHは速やかに通常のpH2.0程度に戻ることが分かります。したがって、薬物は食後で..

難水溶性薬物の溶出性を改善する手法として、共結晶化が注目されています。しかし、共結晶化によって溶出性が改善しない場合も多く、その原因として、粒子表面における”極めて迅速な”フリー体析出が考えられています。今回紹介する論文では、Coformerの違いが粒子表面析出にどのように影響を与えるかを検討しています。

Coformerの異なるCarbamazepine共結晶を6つ作成し、粒子表面析出を詳細に検討しました。その結果、析出防止ポリマーの存在下ではCoformerによって粒子表面析出のパターンが大きくことなることが判明しました。今回の結果は、共結晶や製剤の設計に役立つ知見です。

とくにこの論文では、電子顕微鏡写真に注目です(Supplement Infomationに高解像度の写真があります。)。溶出最初期(< 10分)における粒子表面析出のパターンの違いが、極めて鮮明に捉えられています。これまで、溶出試験後に残存粒子を分析することはあっても(それですらほとんど行われていませんが。。。)、溶出最初期での分析は、ほとんど行われてこなかったのではないでしょうか?
その他、Coformerの溶解度との関連や、Odd-Even効果など、面白い発見が多々ありました。今回の論文は大作ですので、是非ご一読いただければありがたいです。

なお、この論文は、前回PCF-Jでポスター発表した学生さんが筆頭著者です。ものすごく多い実験..