聞くは一時の恥だが記憶は一生モノ。
2016-12-04
かつて経理・財務の長を務めたS・ケンゴーはこう言った。

「ここに何が建っていたかなんて 人はすぐに忘れてしまう」

Y子は 辛島町のカーブを揺られながら
その言葉を思い出していた。

朝から降りつづく秋の雨。
普段はコンビニのビニル傘だが
百貨店勤務時代に「職人展」で奮発した一生モノの甲州傘を
誇らしげに差してY子は市電を降りた。

少し肌寒い。
和服も考えたが、雨模様だったので
選んだのは総柄の薔薇のワンピースに
ラメ入りの黒いニットストール。

館内に入り
ストールを外そうとすると
どうも思っていた形状と違う。
「はっ」
首に巻いていたそれは、
細い頃に着ていたboutiqueNICOLEのノースリーブニットワンピだった……

自家用ドラマ
聞くは一時の恥だが記憶は一生モノ。

💛INTRODUCTION💛

その光景はまだ記憶に新しい。

エレベーターから溢れかえるお客様を
販売促進のT口さんと営業推進のI手さんが出迎え
脇に控えた総務のA木さん、販促のN村さんが複数のカメラマンを誘導。

早くから会場入りしていた人事部のY澤さんI木さんに
遅番のU川さんが加わり開場前のスタッフの動きを最終チェック。
顧客担当のエキスパート・T園さんは年配のゲストの足元を気にかけている。

婦人服3フロアを仕切るW邉さんは会場前で盛り上がる女性客を取りまとめ
そしてMJ社長はふと目についたフロアの小さなゴミを拾った。

「お取引先」というよりゲームメイトのY崎大輔氏は
S・ケンゴー氏とともにブラインドから雨雲を睨み
女性初の執行役員・H野さんはスーパーパート・K庭さんと準備万端を目で合図。
あうんの呼吸で席に着いた。

会場入口には
この日の朝まで準備に奔走し汗だくになった営業推進の若手・S本拓也さんと
質問攻めに満面の笑みで応える総務・S村智子さんの姿が。

それはまるで秋の人気催事「北海道庁主催 北海道の物産と観光展」初日の光景。
しかし、ここはANAクラウンプラザホテル熊本ニュースカイ24階。
そう、この面々は全員「元・県民百貨店」関係であり
金屏風の前に並んでいるのは
その百貨店で出会い
ともに新しい道を歩み始めた新郎拓也・新婦智子なのであった。

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※すみません、とても長くなりそうなのでここからは「あらすじ」にさせていただきます(^^;)

💛第1話💛

プロの独身男と秘密の社内恋愛

学生時代から、家に連れてくる友人は男子のみだったT也。
そんなT也を母・ひとみは「大丈夫かしら…」と心配していた。
趣味はゲームという草食系男子はくまもと阪神に入社し紳士服売場で鍛えられ、営業本部に大抜擢。
朝から晩まで様々な仕事に対峙し、恋の噂は全くなし。

一方、明るく人気者のT子は中学時代からの大の仲良し・エリナと同じ
くまもと阪神に勤めていたが、エリナの退職を機に後任として総務部へ異動となり
相当な仕事量を覚えるのに必死な毎日を送っていた。



ある日、10階の休憩所で居合わせたT也とT子は
熊本県御船町で発見された恐竜「ミフネリュウ」の話で意気投合。
次の休みに、恐竜博物館へ行く約束をする。

美女と草食竜の、秘密の恋のはじまりだった。

💛第2話💛
犬が好きです!彼女からの突然の告白

順調に交際がスタートして一年。
デスクの距離は3メートルの二人だが、その仲を見抜いたものはまだいなかった。
お互い、営業本部と総務本部という職場で一番若手。
毎月の休みを決めるのはどうしても先輩方の後になる。
しかし、二人には「この日だけは譲れない」という大切な日があった。
毎年10月に開催される熱気球の国際大会「佐賀バルーンフェスタ」である。
壮大なスケールで目の前に現れる色とりどりのバルーンたちは
同じ大空を舞台とする花火とはまた違い
冷たくなり始めた風が吹く中
あたたかい熱をゆっくりゆっくりとはらみながら大きくなって
真っ青な空に浮かんでいく。
何万といる観衆はみんな空を見上げて
隣にいるたったひとりの人のあたたかさを感じているようだった。



その帰り、T也は「結婚」を意識して思い切って言ってみた。
「俺、来年またここに来るときは、モコと小さなネコを連れてきたいな…」
夜が、真っ赤になったT也の頬を隠してくれた。
というのにT子はこう言った。
「わたし、ゼッタイ犬!大きい犬が好き!今日も犬連れてた人いっぱいいたよね~」
T也は、夢をひとつ、胸にしまった。

💛第3話💛
心のベストテン第1位

そんな二人が、県民百貨店の閉店を乗り越え、そして新しい職場にも恵まれついに結婚!
白の紋付袴姿のT也と艶やかな緋色の打掛に洋髪が可憐なT子。
本物のお雛様のように、ひな壇に並んだ。
披露宴はT也の母のフラダンス教室からの、祝福のフラからスタート。
会場が微笑みに包まれる。
しかし3組目のタヒチアンダンスが始まると、会場はどよめきに包まれた。
「おおお!」
百貨店OB達の視線の先には完璧な笑顔で踊る、元婦人服マネージャーK岡さんの姿。
Y子の心の中で
黒いソラリーボードがパタパタとまわり「今週の第1位!」でぴたりと止まった。
会いたかった。会えてよかった。
駆けよって話しかけたかった。
しかしK岡さんは、エンディングと同時にミラーゲートの向こうへ華麗に消えていったのだった。

その後新郎新婦はお色直し。
Y子はまだ、二人が結婚したという実感が湧かないでいた。



しかし、ウェディングドレスのT子と、彼女を優しく守るT也がテーブルにやって来た時
あの頃となにも変わらない二人が
自然に本物の夫婦になっていることが感じられてY子はうれし涙を流す。

ねえ、S・ケンゴー。
建物は消えてなくなったけど
ここで出会った二人が
いまこうしてたしかな家族になってる。
桜町の百貨店は
それぞれの記憶のなかで いつまでも永遠に建っているよね。

テーブルフォトが始まった。
元総務室長のA木さんが声掛けをする。
「ハイ、みんな笑って!ヒャッカテン!」
無茶な!「ン」でシャッター切ったらみんな口が真一文字じゃないですか!
「もう一回!ハイ、サクラマチ!」
そうそう。これこれ。
きっとザ・ベストテンのエンディング写真のように豪華な一枚に、なっているはず…。

💛ENDING💛
あとがき

本日も、この長ブログを読んでいただきありがとうございました。
文中にあるエピソードはかなりフィクションです。
登場された皆様
どうか笑って許してくださいませね。