新刊書籍「障害者支援員もやもや日記」について

2023-02-01
「障害者支援員もやもや日記」を読んで                           HP管理人 宮川 徹
 表題の書籍ですが、新刊で目に衝いたので、購入してみました。
 そもそも、自分の息子が障害者支援施設に入所しているわけで、施設やグループホームとのやりとりが日常茶飯事で有り、そこで勤務している職員さんの苦労は分かっている積もりでした。しかしながら施設(札幌市)が自宅(横須賀市)から遠距離にあることから、職員さんの実態は掴みにくい処もあり、この本に興味を引かれたわけです。
 著者は、青年期の昭和40~50年代に雑誌のルポライターを生業としており、壮年期にいたって出版会社を起業するも倒産の憂き目に遭ってしまい、高齢期の生業として障害者グループホームの支援員としての職に就いたのでした。
 そもそも著者は会社倒産後、60代も後半に至って体力も低下し、生活が不安定であったことから、藁にもすがる思いで障害者支援員の職業に就いたようで、日銭を稼げれば良いくらいの感覚であったようです。それでも生来の真面目さか、元ライターとしての探究心の表れか、ホームにおける人間同士の触れ合いに感動、触発され、障害者支援の奥深さを知ることになるのです。
 舞台となった障害者グループホームは、男性5名、女性5名の小規模なグループホームながら、障害の程度は様々であり、重度の障害者との関わりを中心に物語は進んでいきます。重度の障害者(以下、利用者さんと呼称)は、問題行動が多さから、どうしても物語の中心になって行きますが、軽度の利用者さんの中には、一般企業の障害者雇用枠を目指す方々もいて、寧ろ、そのような軽度の方々は自覚もできることから、重度の方々よりも一般社会からの疎外感が強く現れている事が分かります。障害者支援関係者に関わらず、世間の人々は、そのような方々に対する、ほんの少しの手助けが大きな支援の輪となることを自覚する必要があります。
 著者はかつて、文筆業を生業として社会問題も多数記事にして居ただけに、場面毎に脚注として示される根拠法規や規則、医学知識についても分かりやすい表現で書かれています。それ故に利用者さんを始めとする保護者、上司、同僚との関わりの中で、利用者さんに対しては「決して感情的にならない事」を信条とし、小さな工夫を積み重ね、問題を解決していく姿が、物語を清々しく、興味深くしています。本書は、障害者に関わる全ての方々にとって何らかの示唆を与えてくれるものと思います。
2023年2月1日