4級アンモニウム化合物の食物および胆汁ミセルへの結合

2023-09-18
食後投与による経口吸収率の低下は、"Nagative food effect"と呼ばれています。Nagative food effectが臨床で観察されるのは、ほとんどの場合、消化管上皮膜律速(PL-E)の薬物です。*
これまで、nagative food effectには、様々なメカニズムが提唱されてきました。なかでも、「胆汁ミセルへの吸着により、非結合型(フリー)薬物濃度が低下し、消化管上皮膜の膜透過速度が低下する(free fraction theory)。」というメカニズムは、in vitro, in situ, in vivo,さらには臨床試験などの多数の実験データにより、最も強く指示されています。
以前、Akiyamaらは、Caco-2細胞を利用して、胆汁ミセルによるnagative food effectを定量的に予測可能であることを報告しています。この論文では、塩基性薬物については、良い相関が得られていました。しかし、4級アンモニウム化合物(quaternary ammonium compound (QAC))については、相関から外れることがわかりました。QACの経口吸収は、食後投与では顕著に(70%以上)低下することが知られています。したがって、QACに関してはnagative food effectのメカニズムが不明であることは大きな課題でした。
ところで、食後の消化管では、胆汁ミセルと共に食事成分が存在しています。そこで、今回の論文では、食事成分へのQACの吸着について検討しました。

https://pub.iapchem.org/ojs/index.php/admet/article/view/2023

モデル薬物としては、trospium, propahnthelineおよびambenoniumを用いました。フリー濃度は、動的透析法で測定しました。結果、胆汁ミセル単独(FeSSIF)と比較して、胆汁ミセルとFDA breakfastホモジネート(BFH)を混ぜた場合、フリー濃度がより大きく低下し、臨床におけるnagative food effectをほぼ定量的に説明できることがわかりました。
今後、FeSSIF + BFHと動的透析法の組み合わせは、nagative food effectを検討するための良いツールになると思います。

*PL-Eのすべてでnagative food effectが観察されるのではないです。PL-Eの一部のみです。PL-Eは、おおよそBCS IIIに相当しますが、律速段階に基づいて議論する方が解りやすいので、ここではFaRLS分類で議論します。