小腸溶液の緩衝能は弱くない!

2026-02-13
小腸溶液の緩衝能は弱い、という誤解をこれまで何度か聞きしました。

小腸溶液は緩衝剤として、約pH6.5の炭酸緩衝液(BCB)を約10 mMを含んでいます。緩衝能β=約4.4 mM/pHです。

たしかに、JP2やUSP SIFと比較すると、緩衝能は半分以下です。
それは、JP2やUSP SIFが25 mM-50 mMリン酸という異常に高い濃度に設定されているためです。

実際、薬物溶出に対しては、約4.4 mM/pHは緩衝作用がそこそこ強く、
薬物の投与量が数百mgでなければ、バルク溶液のpHは大きく変わりません。

むしろ、リン酸をpH 6.5、β=4.4 mM/pHに合わせた場合、酸性薬物や塩基性薬物塩の溶出においては、リン酸の方が実際の緩衝作用は弱く、pHが大きく変化します。

炭酸緩衝液の緩衝作用が弱くなるのは、解離性薬物の表面における溶出時においてのみです。この場合、二酸化炭素(CO2)と炭酸(H2CO3)の間の水和/脱水和反応が遅いため、表面pHのpHが変化しやすくなります。
したがって、表面pHを生体に合わせるために薄めたリン酸緩衝液を使った場合、バルク溶液pHが変化する場合が多くなります。
また、そもそも表面pHが10 mM BCBと同じになるリン酸濃度は、薬物ごとに異なります。


薄めたリン酸緩衝液を溶出試験に用いる場合には、上記のような注意が必要です。

落し蓋法により、炭酸緩衝液が溶出試験に誰でも簡単に使えるようになったのですから、すくなくとも、経口吸収性予測を目的とする溶出試験には、生体と同じ炭酸緩衝液を用いるべきです。