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  「愛しい人2部」第6部

2015-09-24
ペ・ヨンジュン
キム・へス   主演





「愛しい人2部」第6部  






二人が
愛し合うことは
当たり前


私たちは
家族になる


家族

それは複雑で

それは温かい・・・













【第6章 旅立ち】



ジ:おまえ、食べすぎ!



ジュンスは、テスが目の前でシュークリームを食べている姿を見ていて、うんざりした顔をする。

3時のおやつと称して、スタジオで仕事をしているジュンスに、アイスコーヒーを持ってきたテスは、ジュンスの真向かいのデスクに座って、おやつ用のシュークリームを幸せそうに食べている。



テ:どうして? おいしいわよ。ジュンスも食べてみたら?
ジ:なんで1パックに10個も入ってるのを買ってくるの? それだから食べ過ぎるんだよ。
テ:だってえ、安くていいじゃない!
ジ:一個ずつ売ってるのを買ったほうが食べすぎないだろう? まさか、一人で10個下さいなんて言わないんだからさ。高くてもそっちを買えよ。・・・おまえ、もう一人で半分食べてるよ・・・。(眉間にしわを寄せる)
テ:(手元を見る)あら、ホント!食べちゃった!(笑う)


ジ:ねえ、何キロ、太ったの? 
テ:え?
ジ:何キロ?
テ:さあ・・・。(惚ける)
ジ:知らないはずないだろ?
テ:わかんないわよ・・・。
ジ:今月に入ってすごく増えたよね。
テ:そう?
ジ:見てわかるよ。ねえ、全部で何キロ増えたの?
テ:う~ん・・・15キロくらいかな・・・。
ジ:・・・最悪・・・。(思いっきり嫌な顔をする)
テ:なんで? そのくらい太るものよ・・・。

ジ:でも、おまえの持っている雑誌によると、8キロくらいが理想的とか書いてあったよね。
テ:ふ~ん、そうだった?(笑う)理想と現実ね! (頷く)
ジ:子供って、大きくても4キロだろ? 羊水入れても、6~7キロ? 残りは全部おまえの体についてるんだよ。
テ:ま、そうね・・・。(シュークリームをまた食べている)


ジ:・・・まあ、いいや。産後、デブの女房のままだったら・・・。(テスを見るのをやめて仕事を始める)
テ:ままだったら? (顔を上げて、ジュンスを見る)

ジ:浮気されても仕方ないと思うんだな。(仕事をしながら淡々と言う)
テ:何よ、その言い草!
ジ:そうだろ? ブヨブヨの女房なんて・・・。
テ:ちょっと! 愛がないわねえ!
ジ:愛があるなら、愛がある体型に戻ってねえ。
テ:ひど~い!
ジ:・・・テジョンのお袋みたいになったら最悪・・・。
テ:あそこまではならないわよ・・・(ちょっと弱気)たぶんね。
ジ:そう・・・たぶん。
テ:うううん、きっとならない!
ジ:怪しいな。(つんとした顔で言う)
テ:ジュンス! 夫の愛があれば痩せられるわよ、きっと!
ジ:どうだか・・・。今の食生活を続けていたら、もうブタへの道はまっしぐらだよ。(憎たらしい顔で言う)
テ:ひど~い!



ジュンスは笑って、仕事を続ける。




テ:ねえ・・・ねえ・・・。



テスが立ち上がって、ジュンスのほうへ回る。



ジ:なんだよ・・・。(仕事をしている)
テ:浮気なんてしないでよ。(顔を覗き込む)
ジ:さあ、どうだか。おまえの心がけ次第だよ。(テスを見ないで仕事をしている)
テ:やだ!・・・そんなあ・・・絶対にしないでよ!
ジ:う~ん、わからないよ・・・。(仕事をしている)
テ:どうして、わからないの? ねえ・・・。

ジ:だって、そんな先のことはわからないだろ?
テ:そんなバカな・・・。やあよ、そんなことしちゃ・・・。ねえ、ねえ、ねえってたら・・・。
ジ:くどいなあ・・・。
テ:じゃあ、しないでね!
ジ:だから、わかんないって・・・。(フィルムを持って立ち上がる)

テ:ジュンス・・・やだあ・・・ねえ、ジュンス。ジュンスったら!
ジ:もう、くどいなあ・・・。



テスがジュンスにくっついて歩く。



テ:ジュンス、ねえったら!
ジ:うるさいな。知らないよ。
テ:ねえ、ねえったら! もう!





シ:こ・ん・に・ち・は! お取り込み中だった?

ジ・テ:え?



二人が振り向くと、シンジャが立っていた。



ジ:やあ、先輩。
シ:今来てよかったのかしら? (笑う)
テ:ええ、いいんですよ。別に・・・。
シ:そうお? (笑っている)
ジ:ちょっとこいつがじゃれてきただけですから。
テ:もう、違うでしょ!



ジュンスが笑顔でテスの肩をちょっと抱く。




シ:いつも仲良しね。(笑う)
テ:え、まあね・・・。(困って笑う)

ジ:どうぞ、2階へ上がってください。

テ:先輩。これ、一緒に食べましょう!(シュークリームの箱を見せる)
シ:(覗き込んで)あら、おいしそうね。 いただくわ。
テ:(ジュンスを見て)ジュンスだけよ、いっちゃもんつけてくるのは!
ジ:そうじゃないだろ?

シ:何よ? (ひょとんとして言う)

ジ:え? 別に。(笑う)どうぞ、お2階へ。遊んでやってください。
テ:もう!(ジュンスの顔を見てやな顔をする) 先輩、行きましょう!
シ:お邪魔するわ。









シンジャは、2階に上がり、テスがお茶をいれている間、二人の写真が並んでいる飾り棚を見ている。


シ:いろいろ並べてあるわねえ。ジュンスが好きなの? テスが好きなの? こういうこと。
テ:ええ~?(キッチンから見る)ああ・・・。なんか結婚したら、並べてみたくなっちゃったの、二人とも。
シ:そうなんだ・・・。





シンジャは全体を見回して、それからひとつずつ見ていく。


ドンヒョンも家庭を持ったら、こうやって自分たちの歴史を並べていくのだろうか。


結婚式の写真、二人のスナップ写真、子供時代。
テスの娘の写真・・・。


シンジャはテスの娘の写真を持って、じっと見つめた。
新しく焼き直してある。

テスの失った過去・・・。
そして、それを温かく受け入れているジュンスの愛が見える・・・。




その写真を元に戻し、ジュンスの子供時代の写真を見る。

小さなジュンスがキレイな女の人の膝に座って、微笑んでいる。


シンジャは興味深くその写真を取り上げた。





シ:テス。この写真の女の人って、なんか意味あるの?
テ:なあに?



テスは、お茶を入れたカップをテーブルに置くと、飾り棚のところへ来る。
そして、一緒にその写真を見る。


テ:どれ?



小さなジュンスが実母の膝で微笑んでいる。




テ:これね・・・。ジュンスの本当のお母さんなの。
シ:え? そうなの?
テ:うん。6歳で別れたお母さんよ。
シ:そうだったの・・・。じゃあ、前にお会いしたあの小太りの明るい感じの方は義母なのね?
テ:そう。テジョンさんのお母さん。
シ:そうだったの。ものすごくジュンスを愛してるみたいだから、本当のお母さんだと思ってたわ。
テ:8歳から育ててくれたから。実質的には本当にお母さんだけど・・・。
シ:そうなの・・・。かわいいわね、このジュンス。(笑う)
テ:ええ。





ジュンスはこの間の母との別れがあってから、実家へ遊びに行き、子供のころのアルバムを探した。納戸の奥に仕舞われたそのアルバムの中に、若い日の母がいた。

それを一枚選んで持ち帰り、ここに飾った。


テスはそのことで、ジュンスが今まで封印してきた自分の子供時代を認め、実母を受け入れたことを知った。






テ:さあ、座って、お茶でもどうぞ。
シ:ええ。



二人はダイニングテーブルに着く。




テ:シュークリームも食べて!
シ:いただくわ。おいしいわね。なんか、いくつでも食べられちゃいそう。
テ:でしょ? 最近、私がよく食べるから、ジュンスがこの食生活を続けていくとブタになるっていうの。
シ:(笑う)ホントね。テス、最近、太ったわよ。

テ:先輩まで。(笑う)でも、臨月近くなると、子供ってぐ~んと大きくなるんですよ。きっとこの子も欲しがっているのよ。(お腹を撫でる)
シ:そうやって、甘やかしているのね・・・。でも、1個じゃ収まらないわ。食べていい? (笑う)
テ:どうぞ。先輩も仲間になって!
シ:テスみたいにはならないわよ!
テ:ひどい。(笑う)




テ:ところで、先輩・・・。(真面目になる)ドンヒョン先生と何か進展ありました?
シ:うん。あった・・・。
テ:そう!(うれしそうな顔をする)
シ:今日はね、そのことを話したくて来たの。



テスは期待に胸を弾ませてシンジャの顔を見た。



シ:私が一人でこの子を産むことを許してもらったわ。
テ:え? (驚く)

シ:テスも結婚してほしかったのかな?
テ:ええ・・・。せっかく赤ちゃんを授かったんですもの・・・。それに今までお付き合いしてきたんだし・・・。


シ:そうよね・・・。でも、別れたの・・・。私の我儘。


テ:ドンヒョン先生はなんて言ったんですか?
シ:こういうことになったら、二人で育てるものだろうって・・・。結婚も申し込んでくれたけど・・・。
テ:ならなぜ?
シ:テス。彼ね。もう結婚決めてる人がいたのよ。
テ:・・・。それで、引き下がったの?

シ:違うの。彼に会う前はね、どうやってその結婚を阻止しようか、考えてたんだけど・・・。彼に会ったら、憑き物が落ちたみたいに、この人とは結婚しないで産もうと思っちゃったの。
テ:なんでかしら?
シ:顔を見たらね、思ってた感じと違った。ドンヒョンが違って見えた・・・。もう落ち着いちゃって、人のダンナみたいで・・・。今までのドキドキするドンヒョンはいなくて、普通の男に見えたわ。

テ:普通の男じゃだめなの? もう魅力がなくなっちゃったの?
シ:なんか変でしょ? でも、もう私の彼ではなかった・・・。時期を逸したって感じね。結婚するなら、もっと早くにするべきだったのかもね。
テ:それにしても・・・。赤ちゃんを産むってことは、ドンヒョン先生にだって責任も出てくるし・・・。だって父親でしょ? それって離れていても、一生父親よ。


テスはジュンスの母親のことを思い出す。
血のつながりというものは、切っても切れないものだと言うことをあの時痛感したので、シンジャのことが心配になる。



シ:そうね・・・。でも、なんか彼と一緒にやっていく気がしなくなっちゃったのよ。・・・。長い間、一人でやってきちゃったから、二人で生きるのが面倒に感じちゃったのかな・・・。結局、私って我儘な女なのかも・・・。自分の人生に一生懸命で、彼を振り回して終わっちゃった・・・。
テ:・・・。




ジ:それでいいの?

シ:(振り返って)コッキリ。



ジュンスが入ってきた。



ジ:我儘でしたで、それでいいの?
シ:怒った?
ジ:少しね・・・。先生は一人で産むことを認めたんだね?
シ:そう・・・。
ジ:たいへんなことだね。これから結婚するのに・・・。




ジュンスがテスの隣に座った。




シ:それでね・・・。子供は認知しないって・・・。
ジ・テ:・・・・。


シ:そう言われちゃった。それにはちょっとギャフンとしたけど・・・。でも、結局、私が自分の好きなようにしているんだから、仕方がないわよね・・・。
ジ:それじゃあ、ホントに父親のない子になるんだね?
シ:そうね・・・。おととい、そういう電話をもらいました。でも、その代わりね、慰謝料をいっぱいくれたの。
ジ:え?


シ:・・・私、ニューヨークで一人で赤ちゃん産むことにしたのよ。生まれてしばらくは姉が来てくれることになってるの。もう子供も大学生だからって。それでね、ドンヒョンにはニューヨークへ行く話をしてたから、仕事を休んでいる間の費用とか、いろいろ考えてくれて、ものすごい金額なんだけど・・・くれたの。


ジ:それで?
シ:つまり、その代わり、一人で頑張りなさいって。結婚する人にはやっぱり言えないって・・・。かなり悩んだみたいだけど・・・。その人のこと、すごく愛しているのよ。

ジ:そう・・・ドンヒョン先生もたいへんなものを背負っちゃったね・・・。先輩、先輩は自分ひとりで産むと決めたわけだけど、先生がそれを認めた時点で、先生も、先輩とその子の人生を背負ったんだよ。
シ:コッキリ・・・。

ジ:きっと何かあった時は、力を貸してくれるよ・・・。
シ:コッキリ・・・。
ジ:いい男だったじゃない? 悪くなかったよ・・・。

シ:そうお? 別れた私がバカ?
ジ:バカ。
テ:ジュンスったら・・・。(ジュンスのほうを見る)
ジ:でも、一緒には生きられないって思ったんだから仕方ないよ。これからは、我儘言わないで頑張らないと。
シ:そうね。うん、頑張るわ。テス・・・いいダンナじゃない? コッキリって結婚したほうが魅力的になったわ。


テ:先輩、持ち上げないで。その気になっちゃうから。だめよ・・・。
シ:どうしたの、テス? いい男でよかったじゃない。
テ:だめ・・・。
ジ:テス・・・。(笑う)


シ:よくわからないけど、二人でケンカなんかしないでよ。(二人を見る)
ジ:してませんよ。
シ:そうお? それならいいけど。

ジ:いつ発つの? ニューヨークは?
シ:来週。こっちのマンションは姉が管理してくれるの。・・・あんまりお腹が目立たないうちに、行きたいの。でもねえ、1件、雑誌の写真連載は取ったんだ。だから、細々と仕事は続けるわ。
ジ:そうか。うん・・・。空港まで送ってあげるよ。

シ:コッキリ・・・。ありがとう・・・。ホントにありがとう・・・。(涙が出てくる)
ジ:いいんだよ・・・。テスも散々お世話になったし。お互い様だよ。
シ:うん、甘えさせてもらうわ・・・。







シンジャは自分の思う人生を行く。

ドンヒョンは認知をしないという、一見非情な結論を出したが、その代わり、彼の持っているものの多くをシンジャとその子供に差し出した。


どれが最良な方法なのかはわからない。

ただ、二人がそれで納得して、別々の新しい人生を始めることにしたことだけは明確だ。





シンジャの話で、ちょっと気が重い夕べとなった。

シンジャは、ジュンスたちと夕食を共にした後、テスから必要な出産用品や、体調管理の注意点を聞いて帰っていった。







時計も午後9時を回り、ゆったりとした夜の時間になった。


テスが洗面所からサッパリした顔で出てきた。


キッチンでミネラルウォーターを飲んでいたジュンスと目があった。
ジュンスがちょっと怯えた顔をした。



テ:なあに?
ジ:歯を磨いてきたの?
テ:そうよ。お菓子が食べたくなっちゃったから、歯を磨いて誤魔化したの。どうしたの?
ジ:いや・・・。
テ:なあに?
ジ:いや、一瞬襲われるのかと思ったから。(笑う)
テ:やだ、ジュンスったら。(笑う)




テスは笑いながら、キッチンにいるジュンスの前に来て、ジュンスの手を引いて、リビングのソファまで連れていく。
手を引っ張って、隣に座らせる。



テ:さあ。
ジ:なあに?
テ:襲って。
ジ:なんだよ。(笑う)



ジュンスが立ち上がろうとすると、テスが手を引っ張る。



テ:ほら、襲って。
ジ:参ったなあ。(笑う)
テ:ジュンス。浮気なんてしないでね。
ジ:また、それ?
テ:誓ってよ。
ジ:わかんないよ。(はぐらかす)
テ:意地悪なんだから。
ジ:そんなに心配なの?
テ:そうよ。だいたい妻が出産で入院中っていうのも危ないらしいから。
ジ:バカみたい。(笑う)
テ:だって、ジュンスは、キレイな女の子がいっぱいいるとこへ仕事に行くじゃない。
ジ:そうだよ。より取り見取りだよ。(微笑む)
テ:またあ~。
ジ:だって、先生が声をかければ、簡単になびくよ。
テ:やだん。



テスがジュンスの顔を両手で押さえ込む。




テ:だめよ! そんなことしちゃ。変な女の子にひっかかっちゃうから。ちゃんとママのそばにいなくちゃだめよ。
ジ:大丈夫だよ。もう見る目はできてるから・・・。



ジュンスがやさしくテスを抱く。



テ;それでもだめよ。一生一緒にいるって誓ったんだから。ジュンスが一緒にいたいって言ったんだからね。
ジ:そうだったね。
テ:もう・・・。私たちは仲良くずっと一緒にやっていくんでしょ?
ジ:その予定だよ。
テ:でしょ? 別れたりしないんでしょ? 二人で一緒に子供を育てて、二人の家庭を築いていくんでしょう?
ジ:そうだよ。
テ:だったら、浮気しちゃだめよ。わかった? ねえ、絶対だめよ。ね?
ジ:じゃあ、一夫多妻制の国へ行こう。
テ:バカ・・・。



テスがキスをする。
そして、ジュンスを見つめる。



テ:ねえ、ちゃんとキスをして。ちゃんと相手をしてよ。
ジ:もう・・・。(少しはにかんだように笑う)




ジュンスが熱っぽい目でテスを見つめて、キスをする。




テ:もっとちゃんと。
ジ:じゃあ・・・浮気をする前に全力を尽くして・・・。




ジュンスがもっとテスを引き寄せて、長いディープキスをする。



ジ:これでいい・・・?



すぐ目の前にいるテスをやさしく見つめる。
うっとりしているテスが目を開けて、ジュンスの目を見る。



テ:だめ・・・。
ジ:・・・。(見つめる)
テ:ジュンス・・・。これには終わりがないのよ。わかってる?
ジ:ふ~ん・・・。(見つめている)
テ:あなたが浮気をしないって言うまで続くの・・・。
ジ:そう? じゃあ本腰を入れて。今晩はこうしてずっとキスしてるんだ・・・。
テ:そうよ。唇が腫れちゃうまで・・・。
ジ:いいよ・・・そうしよう。(笑う)
テ:・・・ジュンスったら・・・。(笑う)




二人は見つめ合って、また長くて熱いキスをした・・・。











シンジャの旅立つ日。


ジュンスとテスがマンションへ迎えにいき、シンジャと共に空港へ向かった。


ジ:今日はドンヒョンは来るの?
シ:来ない・・・。もう会わない・・・。仕事仲間としては会うかもしれないけど・・・。
ジ:そう・・・。
シ:一昨日、ニューヨークの口座を確認したら、お金が入金されていたわ・・・。ちゃんとくれたわ・・・。
ジ:そうか・・・。もう始まっちゃったわけだ。
シ:うん。でも、おかげで助かった・・・ありがたいわ。
ジ:そうだね。

テ:今日は晴れててよかったあ。新しい門出にふさわしい空じゃない? もうすぐ梅雨に入っちゃうけど、今日はよかったわ。
ジ:この子が生まれる時は雨が降ってるね。
テ:そうね・・・。
シ:洗濯ものがたいへんね。

テ:そうなの。それで、お風呂場にも乾燥機を入れることにしたの。
シ:すごいじゃない。

ジ:洗濯乾燥機だと、子供のものが縮んじゃうでしょ?それで、風呂場に乾燥機を入れることにしたんだ。
シ:そう。でも、それは便利ね。赤ちゃんだけじゃなくてもあるといいわね。
テ:でしょ? 最初は子供部屋を干し場にしようと思ったけど、それだと、お母様が泊まりにくいでしょ?
シ:ふ~ん。コッキリってやさしいのね。私、コッキリにしておけばよかった!(笑う)
ジ:勘弁してよ。先輩。
シ:この人、年上はキライなのかしら?
テ:さあ?(笑う)





いよいよ、出発ロビーに立ち、シンジャが旅立つ。



シ:じゃあ、行ってくるわ。
ジ:気をつけてね。
シ:この次、会う時はお互い子持ちね。テス、頑張ってね!
テ:はい。写真、送ります。



ジュンスがシンジャを抱き、シンジャとテスも抱きあった。


シンジャは泣かずに笑顔を残していった。

テスはジュンスに寄りかかって涙を拭いた。



シンジャを見送って、後ろを振り返ったジュンスは、少し離れたところにドンヒョンを見つけた。




自分たちがいなかったら、ドンヒョンとシンジャは最後の別れの挨拶をしたのか・・・。

それとも、またよりが戻ったのか・・・。



たぶん、口座にお金が振り込まれた時点で、二人の関係はもう引き返せない状況になったのだろう。



シンジャはドンヒョンの姿を見つけたのだろうか。
それで泣かなかったのか・・・。



そんなことをいくら考えても仕方がない。


彼女はもう旅立ったのだ。



ジュンスと目が合ったドンヒョンはちょっと頭を下げて、くるりと後ろを向いて帰っていってしまった。



ドンヒョンの表情はよくわからない・・・。


でも、きっと長かった恋の終わりを見届けたかったに違いない。















それからしばらくして、テジョンがやってきた。



テジ:お久しぶり~。
テ:こんにちは、テジョンさん。
ジ:持ってきたの?
テジ:うん。お袋の荷物はどこへ入れておく?
テ:子供部屋に置いて。
テジ:わかった。



テジョンが、母親から預かったスーツケースを2階へ上げる。



テジ:よし! OK! これでいつでも来られるな。
テ:ありがと、テジョンさん。
ジ:おまえ、いつからニューヨークへ行くの?
テジ:来週から。今回は3ヶ月の予定なんだけど。
ジ:いいなあ。
テジ:うらやましい?(笑う)まあ、自由を謳歌してくるよ。ここに荷物を置いておけば、テスさんが退院したら、すぐにお袋も来られるだろうし。

ジ:そうだな・・・。ニューヨークに、カメラマンのシンジャ先輩も今行ってるんだ。
テジ:そうか・・・。ご馳走してもらおうっと。
ジ:・・・まあ、それもいいな。あっちは初めてだから、ちょっと助けてあげて。
テジ:わかった・・・。住所とかある? 連絡先。
ジ:また、おまえにメール送るよ。
テジ:わかった。
テ:よろしくね!


テジ:なんだよ、深刻なの? なんか。
ジ:どうして?
テジ:なんかありそうだな?
ジ:おまえはいつも鼻がいいな。まあ、ちょっと食事でもして、顔合わせして、あちらに何かあったら手伝ってあげてほしいんだよ。
テジ:わかった。オレはいつもの友達のところだから。オレがわからないことでも誰かわかると思うから。なんとか力になれると思うよ。
ジ:そうだな、よろしく。


テ:ねえ、暑かったでしょ? こっちでジュース飲んで。



テスがダイニングのほうから声をかける。



テジ:オレ、ビール飲みたい。
ジ:飲んでくか? そうだ。一緒に食事にでも行くか。壮行会を兼ねてさ。
テジ:いいねえ。そうだ、出産前祝いとか? テスさんの出産を応援する会とか。
テ:やだ~。でも楽しい!
ジ:じゃあ、行くか! ちょっと待ってて。仕事を片付けてくるから。
テジ:いいよ。



ジュンスがスタジオに下りていった。




テジ:テスさん、お袋をよろしく。いい人なんですけど。お嫁さんとはどうなのか、オレもわからないから。
テ:ええ。それはこっちも同じだから。お互い様。
テジ:2週間くらいの予定で来るみたいだから。
テ:わかったわ。
テジ:帰りは、荷物は送ってください。
テ:ジュンスがお母さんを送っていくと思うわ。
テジ:そうお? うん・・・。
テ:なあに?


テジ:オレもニューヨークへ行っちゃうから、フォローできないんだけど・・・。
テ:なんか問題あり?
テジ:アニキに言おうか迷ってるんだけど・・・。

テ:心配事?
テジ:それが・・・。
テ:どうしたの? 言って。

テジ:マリさんがやっと退院して、本格的に仕事を始めるんだって。
テ:え?

テジ:それって喜ばしいことでもあるけど・・・アニキと現場で会う可能性もあるでしょ?
テ:・・・・。



テスは、一瞬、頭の中が白くなって、言葉が返せず、テジョンを見つめた。












第7部へ続く












いよいよ出産が間近になってきたテス。

華やいだ気分の裏で、


あのマリが現場へ復帰する・・・。