イオン化した薬物の胆汁ミセル分配係数

2025-07-23
一般的に、イオン型と非イオン型の分配係数の比は、以下のようになることが知られています。

オクタノール水分配係数 (I = 0.15)
カチオン型/ 非イオン型 = 1/1000
アニオン型/ 非イオン型 = 1/10000

リポソーム水分配係数
カチオン型/ 非イオン型 = 1/10
アニオン型/ 非イオン型 = 1/100

それでは、胆汁ミセル(bile micelles)水分配係数(Kbm)の場合、どうなるのでしょうか?
https://pub.iapchem.org/ojs/index.php/admet/article/view/2802
https://doi.org/10.5599/admet.2802

種々の薬物について、pHを振って測定したところ、

カチオン型/ 非イオン型: 0.24から2.6まで薬物により様々
アニオン型/ 非イオン型: 0.03以下

という結果でした。
カチオン型/ 非イオン型は、従来想定していた0.1によりも高く、カチオン型の方が胆汁ミセルに分配しやすいものが半数近くもありました。

以前の検討で、塩基性薬物は、logDpH6.5が低い場合でも、胆汁ミセルに結合し、その結果、食事の影響が負になることが分かっています。
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/431202

本件等の結果から、これには、カチオン型の胆汁ミセル分配が大きく影響していると考えられます。

胆汁酸の親水性部はアニオン型なので、カチオン型薬物分子はこの部分に分配しやすく、疎水性部分へは非イオン型薬物分子の方が分配しやすいと考えられます。このバランスにより、胆汁ミセル分配が決定されると考えられます。

今回の結果は、薬物経口吸収に与える食事の影響の理解に、とても有用と考えらえます。