「恋がいた部屋」2部
2015-09-22
雑踏の中に
あなたを見つけた
あまりの懐かしさに
私は思わず近寄って
あなたに声をかけたくなった
でも、実際は、
あなたに見えないように
そっと身を隠した
あなたにはもう
思い出かもしれないけど
たぶん・・・
きっと
私は
まだ
恋の中に
いるのだと、思う・・・
「ねえ、もっと・・・」
「もっとって・・・」
ヒョンジュンは、腕の中のミンスの顔を覗いた。
ヒ:どうしたの、おまえ?
ミ:どうしたって?
ヒ:・・・なあんか、いつもと違うよ・・・。
ミ:ヒョンジュンはキスが好きでしょ? いいでしょ? もっとして・・・。
ヒ:変・・・。(首をかしげる)
ミ:・・・。
ヒ:ねえ・・・。いつもはさ、本格的にキスしようとすると、お姉ちゃんを思い出しちゃうから嫌とか言うくせに。
ヒョンジュンが顔を少し離して、ミンスの顔をしげしげと見つめた。
ヒ:アネキのこと? 今日、ヘスが来たから?
ミ:というわけじゃないけど・・・。
ヒ:・・・。
ミ:なんか、胸がざわざわしちゃうの。(自分のセーターの胸の部分を引っ張る)
ヒ:・・・。
ミ:もっとして・・・。もっとキスして。(ちょっと笑う)ヒョンジュンが・・・私だけを好きだってわからせて・・・。
ヒ:そんなことしなくても、好きに決まってるだろ。変だよ、今日は。
ヒョンジョンはソファから立ち上がって、流しのほうへ行く。
ヒ:コーヒーでも入れよう。
ミ:ヒョンジュンたら!
ヒョンジュンはインスタントコーヒーにお湯を注ぎながら、ミンスの方を見た。
ヒ:砂糖は2つね。
ミ:うん。
ヒ:ミルクたっぷりと・・・。
ミ:・・・。
今、ミンスの胸はいつになく、ざわざわとざわめいている・・・。
昼間、個展に来た姉のヘスも気になったが、その後の客、アパレル会社の社長令嬢の、ヒョンジュンを見つめたあの目・・・。
あれは、ちょっと普通じゃなかった。
ヒョンジュンの絵が好きで、どうしても一番大きな絵を手に入れたかったと言ったが、その目は少しぎらぎらとして、ハンターのようだった。彼を「尊敬している」と言ったが・・・「尊敬」ではなくて、まるで、自分の手に落としたい「獲物を見る目」をしていた。
チ:お嬢様、こちらが、ハン・ヒョンジュンです。
ヒ:ハン・ヒョンジュンです。この度は・・・お買い上げいただきまして・・・ありがとうございます。(頭を下げる)
ソ:あ、そんな、頭なんて下げていただくと、困ります・・・。私、キム・ソルミと申します。
チ:ヒョンジュンさん、こちらのお嬢様のお父様ね、ここの上に入っているアパレル会社の親会社の社長さんなのよ。
ヒ:・・・あ、そうですか・・・。
ソ:私、ここにもたまに参りますの・・・。いつもは、あなたの作品を置いている裏の・・・チェスクさんの画廊が好きで覗いているんです・・・。今回は、この絵がとても気に入ったので、思い切って買わせていただきました・・・。ずっとあなたのファンでしたのよ。
ソルミは、妖しい光を放った目をして、ヒョンジュンを上目遣いに見つめた。
ヒョンジュンの斜め後ろに、ミンスがいたにもかかわらず、彼女にはミンスがまるで見えていないかのようだ。
ソ:絵の納品の時には、先生にも、是非家まで来ていただきたいの。絵を飾るお部屋も見ていただきたいし、絵のお話を伺いたいわ。
ヒ:はあ・・・。(少し困る)
チ:ヒョンジュンさん、私と一緒に参りましょ。ね。
ヒ:あ、はい。
ご令嬢はうれしそうに笑った。
ヒ:ほら、どうした? コーヒー。(渡す) なんで、そんなにミンスの心がざわめいているのかな・・・?(じっと見つめる)
ミ:・・・。
ヒ:どうしたの? ねえ、ヘスのことなんか、ホントに気にしなくていいんだよ。
ミ:・・・違うの。
ヒ:・・・?
ミ:あのお嬢さん・・・20号を買った人・・・。
ヒ:ああ、あの子ね。それが?
ミ:キレイな人だったよね。私と同じくらいの年かな・・・。
ヒ:確かに美人だった・・・でも、関係ないじゃない、オレたちには。
ミ:でも、納品は先生の手でお願いしますって・・・。
ヒ:それはいいじゃない。すごい買い物なんだからさ。ファンは大切にしなくちゃ。納品ぐらいついて行くよ。
ミ:でも・・・。
ヒ:そんな、いちいちお客に反応してたら切りがないだろ?
ミ:なんだか、ヒョンジュンを見つめる目が・・・やな感じだった。
ヒ:バカだな・・・。(笑う) ミンス、オレとおまえの間に何が入るって言うんだよ。
ミ:・・・そうよね? 相手があなたに興味を持っていたって、そんなの関係ないわよね?
ヒ:うん・・・。ミンスはオレのミューズだからさ・・・。
ミ:・・・。(にっこりする)
ヒ:ミンスがいると、絵を描きたくなっちゃうんだよね。(にっこりする)
ミ:じゃあ、全身でそういって・・・。オレはおまえが一番大切だって・・・オレはミンスのものだって。
ヒ:おっ! そんなふうに誘われたら・・・受けて立つしかないじゃない・・・。(うれしそうにコーヒーカップを置いて笑う)
ミ:もう! そうよ! でもねえ・・・だめよ!他で誘われても乗っちゃ。あなたってアブナイんだから。
ヒ:大丈夫だよ。オレは、ミンスのものだから。(お茶目な顔をする) さあ、おいで、僕のところへ。
ヒョンジョンはにこっとして、シャツを脱ぎながら、ベッドのほうへ歩いて行く。途中で、シャツを脱ぎ捨ててベッドの角に座った。
ヒ:どうぞ、お嬢さん。さあ、おいで!
上半身裸のヒョンジュンが腕を開いて、楽しげにベッドに座っている。
ミ:もう、ホントにあなたって、バカね・・・。
ミンスが笑いながら、ヒョンジュンの元へ行き、ヒョンジュンの前で、セーターを脱ぎ捨てた。
ヒョンジュンはミンスの腰を抱いて、後ろへ倒れこむ。
ヒ:僕のかわいい羊さん・・・。オオカミだよ。
ミ:バカ・・・。(笑う)
ヒ:ああ、早く結婚したいなあ。(ミンスの髪を撫でる)
ミ:もう・・・。(笑う)
ヒ:おまえだってそう思うだろう?
ミ:・・・。
ヒ:合コンだとか言っちゃっても、結局はオレが好きだろ?
ミ:・・・バカ・・・。(うれしそうに見つめる)
ヒ:今回の個展はいい感じだし、これで結婚できるかもしれないね。
ミ:うん。あとは、パパに許してもらうだけだもん。ねえ、初めての時は、おかしかったね。
ヒ:うん・・・「君か!」で、終わっちゃったもんな。(ミンスの胸を触る)
ミ:この前は、「また、おまえか」だった。(笑う)
ヒ:今度はどうだろう?(手を止めて、真面目な顔でミンスを見る)
ミ:大丈夫よ・・・。年末に家に帰った時、ぼそっと言ったもん。「まだ付き合ってるのか」って。だから、「パパ、あの人とはずっと一緒よ。もう3年も一緒よ・・・だから、大丈夫」って・・・。
ヒ:・・・そう・・・。
ミ:うん。あなた、前科者だから、パパも心配なのよ。たった5日で終わっちゃうんじゃないかって。
ヒ:そんなあ・・・。
ミ:まあ、お姉ちゃんのことが一番だけど・・・。
ヒ:・・・。(すまなそうな目をして頬を撫でる)
ミ:でもね、この間は、パパ、私の顔を見て、ちょっと見つめてから、「そうか、一緒なのか」って・・・。今度はきっと許してくれるわ。
ヒョンジュンが大きく息を吐いた。二人は幸せそうな顔で見つめ合う。
ヒ:粘り勝ちといこう・・・。
ミ:うん・・・。
ヒョンジュンが笑って、ミンスを下にした。
ヒ:個展が終わったら・・・挨拶に行こう・・・。
ミ:うん・・・。
ヒ:だから、他の人のことは考えないで。オレだけに気持ちを集中して・・・。オレだけを信用して。
ミ:うん、そうする・・・そうするね。
ヒ:ミンスがいなくちゃ、絵も描けないんだから・・・ずっと近くにいてよ。
ミ:うん・・・甘えんぼさん・・・。
ミンスは幸せそうにヒョンジュンの胸を撫でた。
ヒョンジュンがうれしそうにミンスの首筋から胸にキスをした。
ヒ:オレのミンスでいて、ずっとオレのミンスで・・・。
ミ:うん・・・いる。ずっと、ヒョンジュンのミンスでいる。
ヒ:どんな時も・・・。たとえ・・・くすぐられても・・・!
ヒョンジュンがふざけて、ミンスをくすぐった。
ミンスは体を捩じらせて笑い転げ、最後にはヒョンジュンを蹴った。
ミ:バカ、やめてよ!(笑う)
主演:ぺ・ヨンジュン(ヒョンジュン)
チョン・ジヒョン(ミンス)
【恋がいた部屋】2部
夜更け、ヒョンジュンに抱かれて寝ていたミンスがすくっと起き上がった。
タンクトップにショーツのまま、窓辺に立って外を眺める。
ヒョンジュンのマンションの部屋は4階で、窓から見える街のイルミネーションがとてもキレイだ。
倉庫のような古いマンションだが、ここからの眺めは、心を癒してくれる。日が差している時間ならば、遠く漢江が見える。
ヒ:どうしたの?
ミ:・・・うん? ここの景色が好き・・・。ここって眺めがいいよね・・・。ここが好き・・・。
ヒ:景色だけ?
ヒョンジュンが起きてきて、ミンスを後ろから抱く。
ミ:そう・・・景色は最高。
ヒ:ええ? オレがいるから、景色が最高なんだろ?(横から顔を覗く)
ミ:そうかなあ・・・。
ヒ:そうだよ。
ミンスがヒョンジュンのほうを向く。
ミ:私が来るから最高なのよ・・・。
ヒ:・・・。(見つめる)
ミ:違う?
ヒ:・・・そう・・・。
ミ:・・・。(にっこりとする)
ヒ:ミンスと一緒だから、最高・・・。
ミ:・・・。ヒョンジュン。
ミンスはヒョンジュンに抱かれる。
ミ:結婚してもここがいい・・・。
ヒ:狭いじゃない。
ミ:狭くても、いっつもくっついてて、ここがいい・・・。
ヒ:ふん。(笑う)どこでも、できていいよな。
ミ:やあねえ・・・。
窓辺に置いてあるイスにヒョンジュンが座った。
ヒ:おいで・・・。(幸せそうに見つめる)
ミ:・・・。(ちょっと睨むように見つめる)
ヒ:ねえ・・・。ここは特等席だよ・・・いい眺めだよ。(ミンスを見上げる)
ミ:・・・。
ミンスは下着を脱いで、ヒョンジュンの上に座った。
耳元にヒョンジュンの吐息を聞きながら、窓の外を眺める・・・。
そう、ここの眺めは・・・最高・・・。
ああ・・・!
ミンスはヒョンジュンをぎゅっと抱きしめた。
個展は成功に終わった。
初めての本店での個展だったが、順調に絵も売れ、専門誌の取材も受けた。
これからは、こちらがヒョンジュンの持ち場になっていくだろう。
画廊のチェスクも、この成功をうれしく思っている。自分が手塩にかけた芸術家がまた一人、表舞台に出ていった・・・そこで活躍していくこと、それが彼女の望みだから。
個展が終了して一週間後、ヒョンジュンとチェスクを載せた画廊の車は、あのアパレル会社社長の家へ向かった。
ソウルでも最高級住宅地だ。
画廊のビルの上にも、アパレル会社が入っているが、そこもここの一部門だ。ここの社長の会社の下にいくつもの子会社があり、その中にはデザイナーズブランドあり、下着メーカーあり、扱っている品数は数え切れない。
ヒ:すごい家だなあ・・・。ここだけ、ビバリーヒルズみたい・・・。
チ:ヒョンジュンさんたら。(笑う)
ヒ:あ、もちろん、チェスクさんのとこも、ビバリーヒルズですけど。
チ:・・・。(笑う)
門の横から出ているマイクに向かって、チェスクが言う。
チ:ソン画廊から参りました。
家:お待ち申し上げておりました。
門が開いた。
画廊の車が中に入り、正面玄関前で止まる。
中から、お手伝いが出てきて、挨拶した。
手:お待ちしておりました。どうぞ。
チ:ありがとうございます。じゃあ、ヤン君たち、中へ入れて。
画廊の配送係が後ろのトランクから絵を取り出す。
チェスクとヒョンジュンは、お手伝いに案内されて中へ入った。
手:こちらのリビングでお待ちを。今、お嬢様をお呼びしますので。
手伝いは令嬢の部屋をノックする。
手:いらっしゃいました。
ソ:今、行くわ。お茶をお出ししてね。
手:かしこまりました。
ソ:あ、お父様。今、見えたみたい。
ソルミは電話の子機を持って、父親と話をしている。
ソ:振込みのほう、よろしくお願いしますね。
父:また、おまえの道楽が始まったな。
ソ:道楽ではないわ、お父様。今日、お帰りになって絵を見れば、彼の芸術性がわかってよ。
父:わかった、わかった・・。今度は画家か・・・。歌手よりはまだマシか。
ソ:お父様! もう行くわ。お待たせするわけにもいかないから。チェスクさんも一緒にいらしてるから。
父:問題を起こすなよ。チェスクさんのソン・グループはうちとも取引があるんだから・・・。
ソ:わかっててよ。じゃあ。
ソルミは子機を置くと、鏡台の前で、顔や髪をチェックした。
ヒ:なんかドキドキしちゃうなあ・・・広すぎて。(ソファに座って周りを見回す)
チ:何言ってるのよ。あんな大きな絵なんて、広いお宅じゃなかったら飾れないでしょ?
ヒ:まあ、そうですね。(笑う)ミンスも連れてくればよかったなあ・・・。
チ:・・・。(微笑む)見せたかった?
ヒ:ええ。買われた絵がちゃんと飾られている姿を見たら、喜ぶと思うんですよ。(うれしそうに言う)
チ:本当ねえ・・・。(やさしく微笑む) あ、いらしたわ。
ドアが開いて、ソルミが入ってきた。
ソ:お待たせしてしまって、ごめんなさい。
チ:どうも。
ソ:今日はお二人でありがとうございます。先ほど、父のほうから代金を振込まさせていただきました。
チ:それは・・・後ほど、確認させていただきます。
ソ:よろしく・・・。
チ:どちらに飾ります?
ソ:こちらの次の間に。こっちは書斎を兼ねていて、よくお茶をいただきながら、本を読んだり音楽を聴いたりしますの。
チ:ヤン君たち、こっち。(絵を持って立っていた配送の若い二人を呼ぶ)
ソルミが閉まっていたリビング中央の観音開きのドアを押すと、そこに心地よい感じの部屋が現れた。
天井の高いリビングと打って変わって、天井が低めの、12畳ほどしかない部屋で、決して大きいとは言えないが、音楽鑑賞や読書には最適なスペースに思われた。
ソ:こちらの壁。いかが? どうかしら?
ヒ:いいですね・・・。ここのお部屋の雰囲気はとても・・・(見回す)優雅で温かい・・・。良い所に飾っていただいて、ありがとうございます。
ソ:これで、毎日、この絵とご一緒できるわ。(にっこりする)
次の間の、奥の壁がヒョンジュンの絵の居場所となった。
ソルミは、少しねっとりとした目をして、ヒョンジュンを見つめて微笑んだ。
ソ:どうしましょう・・・。こちらで、お茶をいただこうかしら・・・。配送の方にも、あちらでお茶をお出しするわ。
チ:いえ、私どもは次の配送がありますので・・・ヒョンジュンさんだけ残って・・・。(ヒョンジュンを見る)
ヒ:あ、はい。(ちょっとまごつく)
ソ:そうお?(にっこりとする)
チ:(小声で)じゃあ、ヒョンジュンさん、また後で報告して。
ヒ:あ、はい。
ソン画廊の面々は去り、次の間には、ソルミとヒョンジュンだけになった。
ソ:どうぞ、ケーキも召し上がって。
ヒ:ええ・・・。
二人は、読書用の小さな丸テーブルを囲んで、絵を見ながら座っている。
ソ:この女性の絵を見て思ったの・・・。
ヒ:・・・。
ソ:あなたに、私を描いていただきたいって・・・。
ヒ:・・・。
ソ:いかが? 私の肖像画をお願いできないかしら?
ヒ:・・・。(考える)
ソ:この絵には、この女性に対するやさしさや情熱を感じるの・・・。私も、同じように描いていただきたいの。(じっと見つめる)
ヒ:・・・でも、僕は必ずしも肖像画を描くことを主にしているわけではないので・・・。
ソ:そんなことはわかっています・・・。でも・・・ほしいんです・・・あなたの手で描いた私を・・・。
ヒ:・・・。
ソ:若いときのキレイな私を残しておきたいの・・・。母を見ていつも思うの。あんな美しかった人でも、年月には勝てなかったと・・・。今まで写真も撮ってもらったけど・・・この絵のような情熱はなかったわ。
ヒ:それは・・・。
緑豊かな森に、ミンスが佇んでいる絵だ・・・。
初めて、ミンスと二人で遠出をして、結ばれた時のものだ。
この絵では、ミンスは服を着ているが、自宅に大切に保存している絵では、ミンスは裸体だ。
奥深い緑の高原で、二人きりで過ごした8月の思い出・・・。
あの時のミンスは美しかった。
普通の恋人だったミンスと初めての夜を過ごした翌日、二人はヒョンジュンの絵のために、森の中へ入った。
そこで、ミンスが服を脱ぎ、ヒョンジョンの前に座った。
夏の日差しと、ミンスと自分しかいない空間。
裸体のミンスは、緑の中に溶け込むように存在していた。
まるで、その森に住み着いている妖精のように・・・。
裸体の絵では、ミンスがまるで森の中の生き物のように描かれている。
実際、あの時のヒョンジュンの精神状態はそうだった。何かがトランスした感じ・・・。
ミンスが森の生き物に見えた・・・。
そして、そこに愛があって・・・ミンスからあふれ出てくる愛を描きたいと思った。そして、自分の愛も。
あのミンスを感じた時から、彼女はヒョンジュンのミューズとなった。
ヒ:あの絵のようには・・・。
ソ:やってみて・・・。ねえ、お願い。
ヒ:・・・。
ソ:この絵を購入してもらったお礼に・・・とは、お考えになれないかしら?
ヒ:それは・・・。
ソ:お願い。
ソルミがじっとヒョンジュンを見つめた。
ミ:ねえ、それで?
ヒ:それで・・・描くことにした。
ミ:・・・。
ヒ:なんか文句ある? (ちょっとふてくされた顔をする)
ミ:なんかねえ・・・。どこで描くの?
ヒ:うん?あそこの家で。
ミ:あっちで描くの? (驚く)
ヒ:そうだよ。少しの間、あっちに画材を置かせてもらうんだ。
ミ:・・・。
ヒ:準備しなくちゃ、持ってくもの・・・。
ミ:ヒョンジュン・・・。
ヒ:なあに?(画材を整理している)
ミ:・・・お抱えなんかにならないでね。(心配そうに見る)
ヒ:なりっこないだろ?(笑う)
ミ:でも・・・お金持ちって何を考えているかわからないから・・・。
ヒ:大丈夫だよ。一枚描いたら帰ってくるから。
ミ:パリは? バリは? どうするの?
ヒ:行くよ、もちろん。これが終わったらねえ・・・。(荷物の整理をしている)あ、そうだ。
ミ:なあに?
ヒ:やっぱり、今回はパリとバリはやめて、香港辺りにしない? やっぱり予算的に無理だよ。(荷物をまとめている)
ミ:ヒョンジュン。(笑う)それは、いいけど。・・・でも、あの人が心配・・・。チェスクさんはなんて言ってた?
ヒ:う~ん・・・まあやってみてもいいんじゃないかって。
ミ:・・・。
ヒ:オレが言ったんだよ。ミンス以外の人間もちゃんと描けるか、試してみたいって。
ミ:描いているじゃない。
ヒ:だけど・・・おまえのいないところで、一人で描いてみようかなと思って。
ミ:そんな・・・。
ヒ:なんか、精神的におまえに頼ってるところがあるからさあ・・・。
ミ:そんなの、思い込みよ。ヒョンジュンは自分の力で描いているんだから。
ヒ:(顔をあげて、ミンスを見る)まあ、そんな深刻な話じゃないよ。
ミ:わかった・・・。
ヒ:それにさ、引っ越すわけじゃないんだから。通いだからさ。
ミ:まあね・・・。
ヒョンジュンに来た新しい仕事は、ミンスにはちょっと納得がいかなかった。今まで自由を愛して、好きなものを描いてきた人が、頼まれて、断りきれず・・・とミンスは感じている・・・好きでもない女を描く・・・。
確かに、高い買い物をしてくれた人ではあるけれど・・・。
それから、しばらくして、ヒョンジュンは、あの令嬢の家へと出かけていった。
新装オープンのフレンチレストランのテーブル・コーディネイトに出かけた帰り、ミンスの携帯が鳴った。
見たこともない番号で、ミンスは電話に出ず、携帯をポケットにしまった。
それでも、何度も何度もかけてくるので、仕方なく電話に出ることにした。
ミ:もしもし?
ジ:あのう、キム・ミンスさん?
ミ:ええ・・・あなたは?
ジ:ジフンです。ソン・ジフンです。
ミ:ソン・ジフンさん?
ジ:覚えてない?
ミ:・・・ごめんなさい。なんの仕事でご一緒でしたっけ?
ジ:合コンですよ。
ミ:・・・合コン?
ジ:あれ、忘れちゃったの?あの、スッチーの。
ミ:・・・ああ。それで何か?
ジ:ねえ、僕がわかる?
ミ:ごめんなさい。ぜんぜん・・・。
ジ:眼中になかったんだ。
ミ:ごめんなさい・・・。私・・・あんまり関係ないって感じだったでしょ?
ジ:君自身もそう思ってたわけね?
ミ:まあ・・・。
ジ:ヘジンの隣に座っていた背の高い男ですよ。
ミ:そう・・・。(見当がつかない)
ジ:参ったなあ・・・結構、かっこいいって評判なんだけど・・・。
ミ:私に何か?
ジ:君、食器に詳しいって言ってたでしょ? 和食器が好きって。
ミ:よく覚えてましたね。
ジ:いや、実はうちのお袋の誕生日が近くて・・・お袋は若い頃、日本に駐在してたから、日本の食器が好きなんですよ。茶道とかやってるんだ。それでね、茶碗じゃなくて、お皿をプレゼントしたくてね。君を思い出したんだ。・・・それで、ヘジンに電話番号を教えてもらって・・・。
ミ:そうなの。
ジ:選ぶの、手伝ってくれない?
ミ:まあ、それはいいけど・・・。
ジ:是非。
ミ:・・・わかったわ・・・。
ジ:僕の仕事は知ってるよね?
ミ:お医者様?
ジ:そう、当たり。(笑う)よく覚えていたね。
ミ:(笑う)医者しかいなかったでしょ?
ジ:まあね。それで、僕が早帰りできるのが、今度の金曜日なんだ。君は空いてる?
ミ:・・・。
ミンスは、ヒョンジュンを思った。
ただ、今のヒョンジュンの予定はわからない。あちらのお嬢さんの予定によって、ヒョンジュンも振り回されているから・・・。
ミ:いいわ。せっかくの親孝行さんのお買い物ですもの、お付き合いするわ。
ジ:どこに行ったらいい?
ミ:私の知ってるお店でいいの?
ジ:うん。
ミ:じゃあ、ソウル南の・・・・・。
ジ:じゃあ、そこの前?
ミ:ええ、そのお店の前に、コーヒー店があるから、そこに5時でいいかしら?
ジ:ありがとう。じゃあ、よろしくお願いします。
ミンスは電話を切った。
そういえば、個展の前に、合コンへ行った。そんなこともあった。ヒョンジュンの個展が始まってから、気持ちの全てがヒョンジュンに向かっていたから、すっかり忘れていた。
どんな人だったっけ・・・ホントに忘れちゃった・・・。
ヒョンジュンはどうしているのかしら・・・。うまくいってるのかな・・・。
ここのところ、電話もくれないヒョンジュンがちょっと憎らしい。
ちゃんとやっているのかしら・・・。
ヒ:少し休みましょう。疲れたでしょ?
ソ:大丈夫よ。ちょっと見せて。
ソルミがヒョンジュンの絵を覗く。
ソ:う~ん・・・やっぱり、脱いだほうがいいかしら?
ヒ:え? そのままでもキレイですよ。
ソ:だってえ・・・これじゃつまらないわ・・・。せっかく、先生に描いてもらうのに。普通の私じゃあ・・・もっと、情熱的な絵にしていただきたいの・・・。
ソルミがヒョンジュンの真横に立って、ヒョンジュンの顔を見上げた。
ソ:駄目かしら?
ヒ:・・・情熱的って・・・。
ソ:つまり・・・あなたに情熱を感じてほしいのよ、私に・・・。そうでしょう? あの絵は、あなたが相手に情熱を感じたから、こちらも感じるのよ・・・あなたの情熱を・・・。
ヒ:・・・。(ソルミを見つめる)
ソ:お願い、私をちゃんと描いて・・・。
ソルミは、ヒョンジュンをぐいっと見入り、にんまりとした。
そして、座っていたソファに戻り、ブラウスを脱いだ。
ソ:いかが? ポーズをつけて下さる? どうしたら、いいかしら?
ヒ:・・・。
ヒョンジュンは黙ったまま、ソルミに近づき、ポーズをつける。下から、ソルミがねっとりとした視線でヒョンジュンを見入り、二人の間に微妙な熱を発した。
夜中、ミンスの携帯にヒョンジュンから電話がかかった。
ミ:もしもし?
ヒ:寝た?
ミ:まだ。どうお、うまくいってる?
ヒ:まあね。今、何やってるの?
ミ:新しいお店の見積もり・・・。
ヒ:ふ~ん・・・。
ミ:ヒョンジュン・・・会いたいね・・・。
ヒ:・・うん・・・。
ミ:ここのところ、ぜんぜん会ってないもん・・・。
ヒ:・・・行っていい?
ミ:うん・・・いいよ。
ヒ:これから、タクシーで行くよ。
ミ:うん・・・。
久しぶりのヒョンジュンの声は甘かった・・・。
なんかトラブルでもあったのだろうか・・・。気弱になると、彼はすぐに私を求めてくる・・・。
15分ほどして、ミンスのアパートのチャイムが鳴った。
玄関を開けると、ヒョンジュンが立っていた。
顔を見るだけでも、うれしさがこみ上げた・・・そんなに離れていたわけじゃないけど・・・懐かしくて・・・。
ヒョンジュンがドアを閉めて玄関を入ると、パジャマ姿のミンスに抱きついた。
ミ:どうしたの?
ヒ:・・・。
ヒョンジュンはコートを着たまま、ミンスの胸に顔を埋めて、じっとしている。
ミ:どうしたの?
ヒ:抱かせて・・・。しばらくこうしていていい?
ミ:いいけど。
ヒ:ミンスのニオイがする・・・。石鹸のニオイがする・・・。もうお風呂に入ったの?
ミ:うん・・・。
ヒ:今日は・・・泊まっていい?
ミ:ヒョンジュン? (何があったの?)
ヒョンジュンがミンスを見上げた。
甘い表情に少しやるせなさがあって・・・ミンスは、ヒョンジュンの顔をじっと見つめてから、彼の頭を抱いた。
ミ:いいよ、一緒に夜を過ごそう・・・。久しぶりだもん・・・。ずっと抱き合おう・・・。
ヒ:・・・。
ヒョンジュンはミンスの胸で深呼吸をしてから、顔を見上げて子供のように笑った。
3部へ続く・・・
あなたを見つけた
あまりの懐かしさに
私は思わず近寄って
あなたに声をかけたくなった
でも、実際は、
あなたに見えないように
そっと身を隠した
あなたにはもう
思い出かもしれないけど
たぶん・・・
きっと
私は
まだ
恋の中に
いるのだと、思う・・・
「ねえ、もっと・・・」
「もっとって・・・」
ヒョンジュンは、腕の中のミンスの顔を覗いた。
ヒ:どうしたの、おまえ?
ミ:どうしたって?
ヒ:・・・なあんか、いつもと違うよ・・・。
ミ:ヒョンジュンはキスが好きでしょ? いいでしょ? もっとして・・・。
ヒ:変・・・。(首をかしげる)
ミ:・・・。
ヒ:ねえ・・・。いつもはさ、本格的にキスしようとすると、お姉ちゃんを思い出しちゃうから嫌とか言うくせに。
ヒョンジュンが顔を少し離して、ミンスの顔をしげしげと見つめた。
ヒ:アネキのこと? 今日、ヘスが来たから?
ミ:というわけじゃないけど・・・。
ヒ:・・・。
ミ:なんか、胸がざわざわしちゃうの。(自分のセーターの胸の部分を引っ張る)
ヒ:・・・。
ミ:もっとして・・・。もっとキスして。(ちょっと笑う)ヒョンジュンが・・・私だけを好きだってわからせて・・・。
ヒ:そんなことしなくても、好きに決まってるだろ。変だよ、今日は。
ヒョンジョンはソファから立ち上がって、流しのほうへ行く。
ヒ:コーヒーでも入れよう。
ミ:ヒョンジュンたら!
ヒョンジュンはインスタントコーヒーにお湯を注ぎながら、ミンスの方を見た。
ヒ:砂糖は2つね。
ミ:うん。
ヒ:ミルクたっぷりと・・・。
ミ:・・・。
今、ミンスの胸はいつになく、ざわざわとざわめいている・・・。
昼間、個展に来た姉のヘスも気になったが、その後の客、アパレル会社の社長令嬢の、ヒョンジュンを見つめたあの目・・・。
あれは、ちょっと普通じゃなかった。
ヒョンジュンの絵が好きで、どうしても一番大きな絵を手に入れたかったと言ったが、その目は少しぎらぎらとして、ハンターのようだった。彼を「尊敬している」と言ったが・・・「尊敬」ではなくて、まるで、自分の手に落としたい「獲物を見る目」をしていた。
チ:お嬢様、こちらが、ハン・ヒョンジュンです。
ヒ:ハン・ヒョンジュンです。この度は・・・お買い上げいただきまして・・・ありがとうございます。(頭を下げる)
ソ:あ、そんな、頭なんて下げていただくと、困ります・・・。私、キム・ソルミと申します。
チ:ヒョンジュンさん、こちらのお嬢様のお父様ね、ここの上に入っているアパレル会社の親会社の社長さんなのよ。
ヒ:・・・あ、そうですか・・・。
ソ:私、ここにもたまに参りますの・・・。いつもは、あなたの作品を置いている裏の・・・チェスクさんの画廊が好きで覗いているんです・・・。今回は、この絵がとても気に入ったので、思い切って買わせていただきました・・・。ずっとあなたのファンでしたのよ。
ソルミは、妖しい光を放った目をして、ヒョンジュンを上目遣いに見つめた。
ヒョンジュンの斜め後ろに、ミンスがいたにもかかわらず、彼女にはミンスがまるで見えていないかのようだ。
ソ:絵の納品の時には、先生にも、是非家まで来ていただきたいの。絵を飾るお部屋も見ていただきたいし、絵のお話を伺いたいわ。
ヒ:はあ・・・。(少し困る)
チ:ヒョンジュンさん、私と一緒に参りましょ。ね。
ヒ:あ、はい。
ご令嬢はうれしそうに笑った。
ヒ:ほら、どうした? コーヒー。(渡す) なんで、そんなにミンスの心がざわめいているのかな・・・?(じっと見つめる)
ミ:・・・。
ヒ:どうしたの? ねえ、ヘスのことなんか、ホントに気にしなくていいんだよ。
ミ:・・・違うの。
ヒ:・・・?
ミ:あのお嬢さん・・・20号を買った人・・・。
ヒ:ああ、あの子ね。それが?
ミ:キレイな人だったよね。私と同じくらいの年かな・・・。
ヒ:確かに美人だった・・・でも、関係ないじゃない、オレたちには。
ミ:でも、納品は先生の手でお願いしますって・・・。
ヒ:それはいいじゃない。すごい買い物なんだからさ。ファンは大切にしなくちゃ。納品ぐらいついて行くよ。
ミ:でも・・・。
ヒ:そんな、いちいちお客に反応してたら切りがないだろ?
ミ:なんだか、ヒョンジュンを見つめる目が・・・やな感じだった。
ヒ:バカだな・・・。(笑う) ミンス、オレとおまえの間に何が入るって言うんだよ。
ミ:・・・そうよね? 相手があなたに興味を持っていたって、そんなの関係ないわよね?
ヒ:うん・・・。ミンスはオレのミューズだからさ・・・。
ミ:・・・。(にっこりする)
ヒ:ミンスがいると、絵を描きたくなっちゃうんだよね。(にっこりする)
ミ:じゃあ、全身でそういって・・・。オレはおまえが一番大切だって・・・オレはミンスのものだって。
ヒ:おっ! そんなふうに誘われたら・・・受けて立つしかないじゃない・・・。(うれしそうにコーヒーカップを置いて笑う)
ミ:もう! そうよ! でもねえ・・・だめよ!他で誘われても乗っちゃ。あなたってアブナイんだから。
ヒ:大丈夫だよ。オレは、ミンスのものだから。(お茶目な顔をする) さあ、おいで、僕のところへ。
ヒョンジョンはにこっとして、シャツを脱ぎながら、ベッドのほうへ歩いて行く。途中で、シャツを脱ぎ捨ててベッドの角に座った。
ヒ:どうぞ、お嬢さん。さあ、おいで!
上半身裸のヒョンジュンが腕を開いて、楽しげにベッドに座っている。
ミ:もう、ホントにあなたって、バカね・・・。
ミンスが笑いながら、ヒョンジュンの元へ行き、ヒョンジュンの前で、セーターを脱ぎ捨てた。
ヒョンジュンはミンスの腰を抱いて、後ろへ倒れこむ。
ヒ:僕のかわいい羊さん・・・。オオカミだよ。
ミ:バカ・・・。(笑う)
ヒ:ああ、早く結婚したいなあ。(ミンスの髪を撫でる)
ミ:もう・・・。(笑う)
ヒ:おまえだってそう思うだろう?
ミ:・・・。
ヒ:合コンだとか言っちゃっても、結局はオレが好きだろ?
ミ:・・・バカ・・・。(うれしそうに見つめる)
ヒ:今回の個展はいい感じだし、これで結婚できるかもしれないね。
ミ:うん。あとは、パパに許してもらうだけだもん。ねえ、初めての時は、おかしかったね。
ヒ:うん・・・「君か!」で、終わっちゃったもんな。(ミンスの胸を触る)
ミ:この前は、「また、おまえか」だった。(笑う)
ヒ:今度はどうだろう?(手を止めて、真面目な顔でミンスを見る)
ミ:大丈夫よ・・・。年末に家に帰った時、ぼそっと言ったもん。「まだ付き合ってるのか」って。だから、「パパ、あの人とはずっと一緒よ。もう3年も一緒よ・・・だから、大丈夫」って・・・。
ヒ:・・・そう・・・。
ミ:うん。あなた、前科者だから、パパも心配なのよ。たった5日で終わっちゃうんじゃないかって。
ヒ:そんなあ・・・。
ミ:まあ、お姉ちゃんのことが一番だけど・・・。
ヒ:・・・。(すまなそうな目をして頬を撫でる)
ミ:でもね、この間は、パパ、私の顔を見て、ちょっと見つめてから、「そうか、一緒なのか」って・・・。今度はきっと許してくれるわ。
ヒョンジュンが大きく息を吐いた。二人は幸せそうな顔で見つめ合う。
ヒ:粘り勝ちといこう・・・。
ミ:うん・・・。
ヒョンジュンが笑って、ミンスを下にした。
ヒ:個展が終わったら・・・挨拶に行こう・・・。
ミ:うん・・・。
ヒ:だから、他の人のことは考えないで。オレだけに気持ちを集中して・・・。オレだけを信用して。
ミ:うん、そうする・・・そうするね。
ヒ:ミンスがいなくちゃ、絵も描けないんだから・・・ずっと近くにいてよ。
ミ:うん・・・甘えんぼさん・・・。
ミンスは幸せそうにヒョンジュンの胸を撫でた。
ヒョンジュンがうれしそうにミンスの首筋から胸にキスをした。
ヒ:オレのミンスでいて、ずっとオレのミンスで・・・。
ミ:うん・・・いる。ずっと、ヒョンジュンのミンスでいる。
ヒ:どんな時も・・・。たとえ・・・くすぐられても・・・!
ヒョンジュンがふざけて、ミンスをくすぐった。
ミンスは体を捩じらせて笑い転げ、最後にはヒョンジュンを蹴った。
ミ:バカ、やめてよ!(笑う)
主演:ぺ・ヨンジュン(ヒョンジュン)
チョン・ジヒョン(ミンス)
【恋がいた部屋】2部
夜更け、ヒョンジュンに抱かれて寝ていたミンスがすくっと起き上がった。
タンクトップにショーツのまま、窓辺に立って外を眺める。
ヒョンジュンのマンションの部屋は4階で、窓から見える街のイルミネーションがとてもキレイだ。
倉庫のような古いマンションだが、ここからの眺めは、心を癒してくれる。日が差している時間ならば、遠く漢江が見える。
ヒ:どうしたの?
ミ:・・・うん? ここの景色が好き・・・。ここって眺めがいいよね・・・。ここが好き・・・。
ヒ:景色だけ?
ヒョンジュンが起きてきて、ミンスを後ろから抱く。
ミ:そう・・・景色は最高。
ヒ:ええ? オレがいるから、景色が最高なんだろ?(横から顔を覗く)
ミ:そうかなあ・・・。
ヒ:そうだよ。
ミンスがヒョンジュンのほうを向く。
ミ:私が来るから最高なのよ・・・。
ヒ:・・・。(見つめる)
ミ:違う?
ヒ:・・・そう・・・。
ミ:・・・。(にっこりとする)
ヒ:ミンスと一緒だから、最高・・・。
ミ:・・・。ヒョンジュン。
ミンスはヒョンジュンに抱かれる。
ミ:結婚してもここがいい・・・。
ヒ:狭いじゃない。
ミ:狭くても、いっつもくっついてて、ここがいい・・・。
ヒ:ふん。(笑う)どこでも、できていいよな。
ミ:やあねえ・・・。
窓辺に置いてあるイスにヒョンジュンが座った。
ヒ:おいで・・・。(幸せそうに見つめる)
ミ:・・・。(ちょっと睨むように見つめる)
ヒ:ねえ・・・。ここは特等席だよ・・・いい眺めだよ。(ミンスを見上げる)
ミ:・・・。
ミンスは下着を脱いで、ヒョンジュンの上に座った。
耳元にヒョンジュンの吐息を聞きながら、窓の外を眺める・・・。
そう、ここの眺めは・・・最高・・・。
ああ・・・!
ミンスはヒョンジュンをぎゅっと抱きしめた。
個展は成功に終わった。
初めての本店での個展だったが、順調に絵も売れ、専門誌の取材も受けた。
これからは、こちらがヒョンジュンの持ち場になっていくだろう。
画廊のチェスクも、この成功をうれしく思っている。自分が手塩にかけた芸術家がまた一人、表舞台に出ていった・・・そこで活躍していくこと、それが彼女の望みだから。
個展が終了して一週間後、ヒョンジュンとチェスクを載せた画廊の車は、あのアパレル会社社長の家へ向かった。
ソウルでも最高級住宅地だ。
画廊のビルの上にも、アパレル会社が入っているが、そこもここの一部門だ。ここの社長の会社の下にいくつもの子会社があり、その中にはデザイナーズブランドあり、下着メーカーあり、扱っている品数は数え切れない。
ヒ:すごい家だなあ・・・。ここだけ、ビバリーヒルズみたい・・・。
チ:ヒョンジュンさんたら。(笑う)
ヒ:あ、もちろん、チェスクさんのとこも、ビバリーヒルズですけど。
チ:・・・。(笑う)
門の横から出ているマイクに向かって、チェスクが言う。
チ:ソン画廊から参りました。
家:お待ち申し上げておりました。
門が開いた。
画廊の車が中に入り、正面玄関前で止まる。
中から、お手伝いが出てきて、挨拶した。
手:お待ちしておりました。どうぞ。
チ:ありがとうございます。じゃあ、ヤン君たち、中へ入れて。
画廊の配送係が後ろのトランクから絵を取り出す。
チェスクとヒョンジュンは、お手伝いに案内されて中へ入った。
手:こちらのリビングでお待ちを。今、お嬢様をお呼びしますので。
手伝いは令嬢の部屋をノックする。
手:いらっしゃいました。
ソ:今、行くわ。お茶をお出ししてね。
手:かしこまりました。
ソ:あ、お父様。今、見えたみたい。
ソルミは電話の子機を持って、父親と話をしている。
ソ:振込みのほう、よろしくお願いしますね。
父:また、おまえの道楽が始まったな。
ソ:道楽ではないわ、お父様。今日、お帰りになって絵を見れば、彼の芸術性がわかってよ。
父:わかった、わかった・・。今度は画家か・・・。歌手よりはまだマシか。
ソ:お父様! もう行くわ。お待たせするわけにもいかないから。チェスクさんも一緒にいらしてるから。
父:問題を起こすなよ。チェスクさんのソン・グループはうちとも取引があるんだから・・・。
ソ:わかっててよ。じゃあ。
ソルミは子機を置くと、鏡台の前で、顔や髪をチェックした。
ヒ:なんかドキドキしちゃうなあ・・・広すぎて。(ソファに座って周りを見回す)
チ:何言ってるのよ。あんな大きな絵なんて、広いお宅じゃなかったら飾れないでしょ?
ヒ:まあ、そうですね。(笑う)ミンスも連れてくればよかったなあ・・・。
チ:・・・。(微笑む)見せたかった?
ヒ:ええ。買われた絵がちゃんと飾られている姿を見たら、喜ぶと思うんですよ。(うれしそうに言う)
チ:本当ねえ・・・。(やさしく微笑む) あ、いらしたわ。
ドアが開いて、ソルミが入ってきた。
ソ:お待たせしてしまって、ごめんなさい。
チ:どうも。
ソ:今日はお二人でありがとうございます。先ほど、父のほうから代金を振込まさせていただきました。
チ:それは・・・後ほど、確認させていただきます。
ソ:よろしく・・・。
チ:どちらに飾ります?
ソ:こちらの次の間に。こっちは書斎を兼ねていて、よくお茶をいただきながら、本を読んだり音楽を聴いたりしますの。
チ:ヤン君たち、こっち。(絵を持って立っていた配送の若い二人を呼ぶ)
ソルミが閉まっていたリビング中央の観音開きのドアを押すと、そこに心地よい感じの部屋が現れた。
天井の高いリビングと打って変わって、天井が低めの、12畳ほどしかない部屋で、決して大きいとは言えないが、音楽鑑賞や読書には最適なスペースに思われた。
ソ:こちらの壁。いかが? どうかしら?
ヒ:いいですね・・・。ここのお部屋の雰囲気はとても・・・(見回す)優雅で温かい・・・。良い所に飾っていただいて、ありがとうございます。
ソ:これで、毎日、この絵とご一緒できるわ。(にっこりする)
次の間の、奥の壁がヒョンジュンの絵の居場所となった。
ソルミは、少しねっとりとした目をして、ヒョンジュンを見つめて微笑んだ。
ソ:どうしましょう・・・。こちらで、お茶をいただこうかしら・・・。配送の方にも、あちらでお茶をお出しするわ。
チ:いえ、私どもは次の配送がありますので・・・ヒョンジュンさんだけ残って・・・。(ヒョンジュンを見る)
ヒ:あ、はい。(ちょっとまごつく)
ソ:そうお?(にっこりとする)
チ:(小声で)じゃあ、ヒョンジュンさん、また後で報告して。
ヒ:あ、はい。
ソン画廊の面々は去り、次の間には、ソルミとヒョンジュンだけになった。
ソ:どうぞ、ケーキも召し上がって。
ヒ:ええ・・・。
二人は、読書用の小さな丸テーブルを囲んで、絵を見ながら座っている。
ソ:この女性の絵を見て思ったの・・・。
ヒ:・・・。
ソ:あなたに、私を描いていただきたいって・・・。
ヒ:・・・。
ソ:いかが? 私の肖像画をお願いできないかしら?
ヒ:・・・。(考える)
ソ:この絵には、この女性に対するやさしさや情熱を感じるの・・・。私も、同じように描いていただきたいの。(じっと見つめる)
ヒ:・・・でも、僕は必ずしも肖像画を描くことを主にしているわけではないので・・・。
ソ:そんなことはわかっています・・・。でも・・・ほしいんです・・・あなたの手で描いた私を・・・。
ヒ:・・・。
ソ:若いときのキレイな私を残しておきたいの・・・。母を見ていつも思うの。あんな美しかった人でも、年月には勝てなかったと・・・。今まで写真も撮ってもらったけど・・・この絵のような情熱はなかったわ。
ヒ:それは・・・。
緑豊かな森に、ミンスが佇んでいる絵だ・・・。
初めて、ミンスと二人で遠出をして、結ばれた時のものだ。
この絵では、ミンスは服を着ているが、自宅に大切に保存している絵では、ミンスは裸体だ。
奥深い緑の高原で、二人きりで過ごした8月の思い出・・・。
あの時のミンスは美しかった。
普通の恋人だったミンスと初めての夜を過ごした翌日、二人はヒョンジュンの絵のために、森の中へ入った。
そこで、ミンスが服を脱ぎ、ヒョンジョンの前に座った。
夏の日差しと、ミンスと自分しかいない空間。
裸体のミンスは、緑の中に溶け込むように存在していた。
まるで、その森に住み着いている妖精のように・・・。
裸体の絵では、ミンスがまるで森の中の生き物のように描かれている。
実際、あの時のヒョンジュンの精神状態はそうだった。何かがトランスした感じ・・・。
ミンスが森の生き物に見えた・・・。
そして、そこに愛があって・・・ミンスからあふれ出てくる愛を描きたいと思った。そして、自分の愛も。
あのミンスを感じた時から、彼女はヒョンジュンのミューズとなった。
ヒ:あの絵のようには・・・。
ソ:やってみて・・・。ねえ、お願い。
ヒ:・・・。
ソ:この絵を購入してもらったお礼に・・・とは、お考えになれないかしら?
ヒ:それは・・・。
ソ:お願い。
ソルミがじっとヒョンジュンを見つめた。
ミ:ねえ、それで?
ヒ:それで・・・描くことにした。
ミ:・・・。
ヒ:なんか文句ある? (ちょっとふてくされた顔をする)
ミ:なんかねえ・・・。どこで描くの?
ヒ:うん?あそこの家で。
ミ:あっちで描くの? (驚く)
ヒ:そうだよ。少しの間、あっちに画材を置かせてもらうんだ。
ミ:・・・。
ヒ:準備しなくちゃ、持ってくもの・・・。
ミ:ヒョンジュン・・・。
ヒ:なあに?(画材を整理している)
ミ:・・・お抱えなんかにならないでね。(心配そうに見る)
ヒ:なりっこないだろ?(笑う)
ミ:でも・・・お金持ちって何を考えているかわからないから・・・。
ヒ:大丈夫だよ。一枚描いたら帰ってくるから。
ミ:パリは? バリは? どうするの?
ヒ:行くよ、もちろん。これが終わったらねえ・・・。(荷物の整理をしている)あ、そうだ。
ミ:なあに?
ヒ:やっぱり、今回はパリとバリはやめて、香港辺りにしない? やっぱり予算的に無理だよ。(荷物をまとめている)
ミ:ヒョンジュン。(笑う)それは、いいけど。・・・でも、あの人が心配・・・。チェスクさんはなんて言ってた?
ヒ:う~ん・・・まあやってみてもいいんじゃないかって。
ミ:・・・。
ヒ:オレが言ったんだよ。ミンス以外の人間もちゃんと描けるか、試してみたいって。
ミ:描いているじゃない。
ヒ:だけど・・・おまえのいないところで、一人で描いてみようかなと思って。
ミ:そんな・・・。
ヒ:なんか、精神的におまえに頼ってるところがあるからさあ・・・。
ミ:そんなの、思い込みよ。ヒョンジュンは自分の力で描いているんだから。
ヒ:(顔をあげて、ミンスを見る)まあ、そんな深刻な話じゃないよ。
ミ:わかった・・・。
ヒ:それにさ、引っ越すわけじゃないんだから。通いだからさ。
ミ:まあね・・・。
ヒョンジュンに来た新しい仕事は、ミンスにはちょっと納得がいかなかった。今まで自由を愛して、好きなものを描いてきた人が、頼まれて、断りきれず・・・とミンスは感じている・・・好きでもない女を描く・・・。
確かに、高い買い物をしてくれた人ではあるけれど・・・。
それから、しばらくして、ヒョンジュンは、あの令嬢の家へと出かけていった。
新装オープンのフレンチレストランのテーブル・コーディネイトに出かけた帰り、ミンスの携帯が鳴った。
見たこともない番号で、ミンスは電話に出ず、携帯をポケットにしまった。
それでも、何度も何度もかけてくるので、仕方なく電話に出ることにした。
ミ:もしもし?
ジ:あのう、キム・ミンスさん?
ミ:ええ・・・あなたは?
ジ:ジフンです。ソン・ジフンです。
ミ:ソン・ジフンさん?
ジ:覚えてない?
ミ:・・・ごめんなさい。なんの仕事でご一緒でしたっけ?
ジ:合コンですよ。
ミ:・・・合コン?
ジ:あれ、忘れちゃったの?あの、スッチーの。
ミ:・・・ああ。それで何か?
ジ:ねえ、僕がわかる?
ミ:ごめんなさい。ぜんぜん・・・。
ジ:眼中になかったんだ。
ミ:ごめんなさい・・・。私・・・あんまり関係ないって感じだったでしょ?
ジ:君自身もそう思ってたわけね?
ミ:まあ・・・。
ジ:ヘジンの隣に座っていた背の高い男ですよ。
ミ:そう・・・。(見当がつかない)
ジ:参ったなあ・・・結構、かっこいいって評判なんだけど・・・。
ミ:私に何か?
ジ:君、食器に詳しいって言ってたでしょ? 和食器が好きって。
ミ:よく覚えてましたね。
ジ:いや、実はうちのお袋の誕生日が近くて・・・お袋は若い頃、日本に駐在してたから、日本の食器が好きなんですよ。茶道とかやってるんだ。それでね、茶碗じゃなくて、お皿をプレゼントしたくてね。君を思い出したんだ。・・・それで、ヘジンに電話番号を教えてもらって・・・。
ミ:そうなの。
ジ:選ぶの、手伝ってくれない?
ミ:まあ、それはいいけど・・・。
ジ:是非。
ミ:・・・わかったわ・・・。
ジ:僕の仕事は知ってるよね?
ミ:お医者様?
ジ:そう、当たり。(笑う)よく覚えていたね。
ミ:(笑う)医者しかいなかったでしょ?
ジ:まあね。それで、僕が早帰りできるのが、今度の金曜日なんだ。君は空いてる?
ミ:・・・。
ミンスは、ヒョンジュンを思った。
ただ、今のヒョンジュンの予定はわからない。あちらのお嬢さんの予定によって、ヒョンジュンも振り回されているから・・・。
ミ:いいわ。せっかくの親孝行さんのお買い物ですもの、お付き合いするわ。
ジ:どこに行ったらいい?
ミ:私の知ってるお店でいいの?
ジ:うん。
ミ:じゃあ、ソウル南の・・・・・。
ジ:じゃあ、そこの前?
ミ:ええ、そのお店の前に、コーヒー店があるから、そこに5時でいいかしら?
ジ:ありがとう。じゃあ、よろしくお願いします。
ミンスは電話を切った。
そういえば、個展の前に、合コンへ行った。そんなこともあった。ヒョンジュンの個展が始まってから、気持ちの全てがヒョンジュンに向かっていたから、すっかり忘れていた。
どんな人だったっけ・・・ホントに忘れちゃった・・・。
ヒョンジュンはどうしているのかしら・・・。うまくいってるのかな・・・。
ここのところ、電話もくれないヒョンジュンがちょっと憎らしい。
ちゃんとやっているのかしら・・・。
ヒ:少し休みましょう。疲れたでしょ?
ソ:大丈夫よ。ちょっと見せて。
ソルミがヒョンジュンの絵を覗く。
ソ:う~ん・・・やっぱり、脱いだほうがいいかしら?
ヒ:え? そのままでもキレイですよ。
ソ:だってえ・・・これじゃつまらないわ・・・。せっかく、先生に描いてもらうのに。普通の私じゃあ・・・もっと、情熱的な絵にしていただきたいの・・・。
ソルミがヒョンジュンの真横に立って、ヒョンジュンの顔を見上げた。
ソ:駄目かしら?
ヒ:・・・情熱的って・・・。
ソ:つまり・・・あなたに情熱を感じてほしいのよ、私に・・・。そうでしょう? あの絵は、あなたが相手に情熱を感じたから、こちらも感じるのよ・・・あなたの情熱を・・・。
ヒ:・・・。(ソルミを見つめる)
ソ:お願い、私をちゃんと描いて・・・。
ソルミは、ヒョンジュンをぐいっと見入り、にんまりとした。
そして、座っていたソファに戻り、ブラウスを脱いだ。
ソ:いかが? ポーズをつけて下さる? どうしたら、いいかしら?
ヒ:・・・。
ヒョンジュンは黙ったまま、ソルミに近づき、ポーズをつける。下から、ソルミがねっとりとした視線でヒョンジュンを見入り、二人の間に微妙な熱を発した。
夜中、ミンスの携帯にヒョンジュンから電話がかかった。
ミ:もしもし?
ヒ:寝た?
ミ:まだ。どうお、うまくいってる?
ヒ:まあね。今、何やってるの?
ミ:新しいお店の見積もり・・・。
ヒ:ふ~ん・・・。
ミ:ヒョンジュン・・・会いたいね・・・。
ヒ:・・うん・・・。
ミ:ここのところ、ぜんぜん会ってないもん・・・。
ヒ:・・・行っていい?
ミ:うん・・・いいよ。
ヒ:これから、タクシーで行くよ。
ミ:うん・・・。
久しぶりのヒョンジュンの声は甘かった・・・。
なんかトラブルでもあったのだろうか・・・。気弱になると、彼はすぐに私を求めてくる・・・。
15分ほどして、ミンスのアパートのチャイムが鳴った。
玄関を開けると、ヒョンジュンが立っていた。
顔を見るだけでも、うれしさがこみ上げた・・・そんなに離れていたわけじゃないけど・・・懐かしくて・・・。
ヒョンジュンがドアを閉めて玄関を入ると、パジャマ姿のミンスに抱きついた。
ミ:どうしたの?
ヒ:・・・。
ヒョンジュンはコートを着たまま、ミンスの胸に顔を埋めて、じっとしている。
ミ:どうしたの?
ヒ:抱かせて・・・。しばらくこうしていていい?
ミ:いいけど。
ヒ:ミンスのニオイがする・・・。石鹸のニオイがする・・・。もうお風呂に入ったの?
ミ:うん・・・。
ヒ:今日は・・・泊まっていい?
ミ:ヒョンジュン? (何があったの?)
ヒョンジュンがミンスを見上げた。
甘い表情に少しやるせなさがあって・・・ミンスは、ヒョンジュンの顔をじっと見つめてから、彼の頭を抱いた。
ミ:いいよ、一緒に夜を過ごそう・・・。久しぶりだもん・・・。ずっと抱き合おう・・・。
ヒ:・・・。
ヒョンジュンはミンスの胸で深呼吸をしてから、顔を見上げて子供のように笑った。
3部へ続く・・・