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創作を書いたり読んだりと思い思いの時をネット内でゆったりと過ごしています。

 「恋の病2」2部

2015-09-22
人は、
こんな私を見て、
なんと思うだろう

心に空いていた穴に
ぴったりと嵌ったような恋心


恋をすることも
すっかり忘れていたのに



でも・・・
この胸のざわめき


あの人を抱きしめたいと思う気持ち

あの人が触れる女の指を憎らしいと思うジェラシー



これは分析せずともわかる

恋だ


バカげた恋だといわれても
今の私を止めることはできない・・・







ペ・ヨンジュン主演
「恋の病2」2部









「ユナ、あなた大丈夫?」
「何?」
「なんか心ここにあらずみたい」

「そんなことはないわよ」

「だって、いつもは、このおかずに入ってるのなあに?って、あなたいろいろ言うくせに。今日はず~っと黙ってる」
「そうかしら。今日のはすごくおいしいなって思いながら、食べてるわよ」

私は、叔母のウンジュを見て笑った。


「本当? なんか怪しいけど・・・。ねえ、少し飲まない?」
「え?」

「飲もうよ。どうせ、泊まっていくんでしょ?」


叔母が席を立って、キッチンのほうへ行く。


「お姉さん。どこか・・・外に、飲みにいく・・・?」
「ええ~? もうご飯食べちゃったし、面倒じゃない? うちでゆっくり飲もうよ。そのほうが安上がりだし。山(サン)でいいよね? 冷でいいかな?」

「うん・・・」



叔母は冷蔵庫から氷を出して酒の準備をしている。

私は、叔母の家へ来てからも、JJのことが頭から離れなかった。


というより、なんか・・・どんどん、彼が私の中で広がっていくのである。
最初は、頭の片隅。だから、叔母の話も聴けた。


なのに、JJがどんどん広がって、私の右脳から左脳から前頭葉から、海馬まで、全てを埋め尽くしていっている。



指先から連想して? JJ !

では、2×8+9= JJ !

では・・・明日の天気は? う~んと、JJ !

では、詩を読む時に一番大切なことは? JJです・・・。


そう? 

なら、

あなたが、抱きしめられたいと思っているのは?  ・・・JJです・・・。


今、一番、会いたいのは?


JJよ!






「どっこしょ。外で飲むっていっても、駅前なんてサラリーマンばっかりだし」
「そうよね・・・うちが楽ね・・・うん」
「でしょ?」
「うん!」



私は叔母の目を盗んで、時計を見た。

まだ8時を回ったところだ。


「どうしたの? なんかあるの? さっきから時計ばっかり見てる」
「ん? 別に・・・」

「そうそう。ユナにねえ、お見合いの話がきてるのよお」
「そうなの?」

叔母は引っ込み思案の私を心配して、よく見合いの話を探してきてくれる。


「結構いい感じの人よ。ソウル市役所に勤めてるんだって。生活は安定しているわよ」
「へえ・・・いくつ?」
「ええとね。写真見る?」
「あるの?」
「うん」

「いいわ・・・まだ、いい。でも、いくつ?」
「53、4くらいだったかな」

「それでいい感じっていうの?」
「でしょ?」

「そんな、年上・・・」
「だって、10歳くらいしか違わないのよ。最近の縁談じゃあ、若いほうじゃない」



確かにそうだ。

40を過ぎてから、急に相手の年齢が上になった。それに、子供なんて当たり前のようにいる。
皆、子供が成人しているなんて、ラッキーだとか言っちゃって・・・本当にそう? 

私だって、まだまだ産める年なのに・・・何がラッキーなの・・・? 

成人した子供の代わりに老後の面倒を見るのがラッキーなの?




「ねえ、実直そうな人だったわよ。写真見なさいよ」
「いいわ。いらない・・・」

「でも、勿体ないわ・・・せっかくのチャンス」
「何がチャンスよ? お姉さんとのほうが、ぴったりの年頃じゃない」
「ユナ!」
「私・・・もっとちゃんとした相手がほしい・・・ちゃんと私を見てくれるような」
「あら、おじさんだから、いい加減てことはないわよ。あなたは年頃より若く見えるし、かわいいもん。きっと、かわいがってくれるわよ」

「かわいがる・・・ああ、なんか嫌・・・そんな表現しないで」

「そんなこと、言いなさんな。縁は大切にしなくちゃ」
「・・・」

「ねえ、気分直しに飲もう。ね?」
「うん・・・」
「なんか、気になるの?」
「・・・別に・・・」

「オンザロックでどうぞ」

「ありがとう」

「まあ、お見合いのほうは、気が向いたら、声かけて。このまま、一人なんて寂しいわよ。私は、ユナがこうやってきてくれると、楽しいけど。あなたがそれで終わっちゃうのが、ちょっとね、叔母としては、かわいそうなの」

「うん・・・考えておく」



叔母はにっこり笑うと、楽しげにいろいろと最近の身の周りの話をしてくれて、私を楽しませてくれた。



でも。

私の頭の中は・・・あのカウンターの中にいたJJのことばかりだ・・・。



「1時看板だから・・・」

彼は、私を待っているだろうか。

待っていなかったとしても・・・私は彼に・・・会いたい。

久しぶりに、男の人にしっかりと見つめられた。



帰りがけ、ドアを開ける瞬間、彼の胸が私の肩に触れた。男を感じた・・・。



私は叔母を前にしながらも、胸の中に燻り始めた火を消すことができなかった。







「あ~あ、なんか眠くなっちゃった。今、何時かしら」

叔母が時計を見た。

「10時半か・・・早いけど、寝ていい? なんか、今日は眠たいわ。いつもより多く飲んだかな・・・」


そう、私は、あまり飲まなかった・・・。
叔母の話に笑ったが、気がそぞろで、どんな話だったかもよく覚えていない・・・。



「布団敷こうか。もうお風呂はいいわ、今日は。ああ、眠い。あなたも適当にして、お風呂に入って寝なさいね」



叔母はそう言うと、さっさと寝てしまった。




私は、後片付けをして、風呂に入り、布団の上に寝転がった。
目を瞑っても、心が起きていて、寝付くことができなかった。



待ってるかしら・・・。

お客がいっぱい来ているんですもの。

気になんてしていないわ。



ああ、どうしよう・・・。



私は、てんてんと寝返りを繰り返す・・・。

そして、ハッと気がついた。

なんでこんなに重く考えていたんだろう。

彼はバーのマスターで、いつも客に言うように、「また来てくださいね」と言っただけかもしれない。
近くに泊まりにきているのだから、「ちょっと飲みに来ちゃった」と軽く言えばいいじゃないか。



今日、行かないでまた次回といっても、それでは彼が忘れてしまうかもしれない。

私は・・・覚えていてほしい・・・。





私は起き上がって出かける準備をした。
洗面所で鏡を見ると、顔がテカテカ光っているので、メイクだけさらっと仕上げた。
薄くファンデを塗って、頬紅をほんの少し高めの頬に差し、マスカラを少しと、眉を少し書き足した。リップはグロスだけ塗り、できるだけ素顔っぽく仕上げる。髪は洗いっぱなしだったので、ミディアムショートヘアの髪にゆるいウェーブが出ていたが、それが返って、若々しく見えたし、自然な感じがしたので、ブローせず、それに軽くトリートメントを手ぐしで撫で付ける程度にした。



服装も普段着を意識した。

ちょっと寝る前のナイトキャップといった感じに見せたくて、カットソーにカーディガンが羽織る。パンツははいてきたクロップドパンツでいいだろう。ハンドバッグも仰々しいので、化粧品を入れてきた小さなポーチに、リップとコンパクトと財布とハンカチだけを入れた。

玄関で、叔母のサンダルを借りようと思ったが、あまりにラフなので、素足にヒールを履き、玄関を出た。







もう午前0時を回っていたが、それでも、なぜか私は「今日を逃していけない」という気持ちに駆り立てられていた。


夜の街を走りに走って、私は「ドリアン」へ向かった。









1時が看板と言っていたから、まだやっているはずだ。

狭い階段を駆け上って、あめ色のドアを思い切り開いた。




バーの中は、カウンターに客が一人座っているだけだった。



私はちょっと気後れして、カウンターの中を見た。

JJが鏡に映った私を見つけて、振り返った。 



「来たね」
「・・・」

JJが私を見てうれしそうな顔をした。暗いバーの中で、彼の顔だけがライトに当たったように輝いて見える。

JJがコースターとおしぼりを置いて、席を指定した。


「こっちへおいで」


JJがじっと私の目を見据えているので、私は胸の鼓動がどんどん速くなってくるのが自分でもよくわかった。

足が縺れそうになりながらも、ゆっくりと、カウンターへ近づいた。



客が私のほうを振り返った。



「あら。ずいぶん、キレイなお姉さん、捕まえちゃったんじゃない」


私はその言葉に驚いて、その客を見た。

その客は、女装をして・・・たぶん、男だ。 にんまりと、私を見ている。


「余計なこと、言うなよ」

JJが言った。


「さあ、お姉さんの隣へいらっしゃいよ!」

その客がうれしそうに私を手招きした。



「隣に座ってやってくれる?」
「え、ええ・・・」


私は、その奇妙な客に頭を下げて、隣へ座った。



「何飲む?」
「そうねえ・・・」

「私のと同じの、作ってあげて。このキレイなお姉さんにも」
「・・・」

「じゃあ・・・同じカクテルでいいね」

「強くしなさいよ。襲えるように」
「え?」

私は驚いた。

「この人の言うことは聞かないようにね。女性用に軽くするよ。心配しなくて大丈夫だよ。こっちのお姉さんは特別なお姉さんだから」

JJが笑った。




「・・・空いてるのね・・・もう看板だから?」
「違うの。客をどんどん帰しちゃったのよ。遅く来た客には、『もう看板です』って言うくせに、店を閉めない。怪しいなと思ったの。私を一人占めしたかったんじゃなかったのね。あなたを待ってたのね」

その客は笑って、私を見て、挑戦的な目をした。



「その人、あっちの方面の人だから。気にしないで」
「あっち?」
「私もあなたの仲間よ。仲良くしましょう」


ああ、オカマか。


「ふ~ん。JJは、こういう子が好きなんだ」


オカマが私をじっと見た。

JJは黙って私を見て、にんまりした。


「ちょっと清楚な感じのキレイなお姉さんね・・・。まだ蕾って感じがいいわね。でも、ホントはもう蕾じゃない・・・そこがいいのかしら?」

「・・・」

「私、彼と寝たことあるのよ・・・」

「え?」

「裸で・・・」

「・・・」

「男同士でだろ? はい。カクテル」


JJが出したオレンジのカクテルにはミントの葉が乗っていた。
JJが微笑んだ。



「男同士だって、裸は知ってるもん。すごくいいわよ・・・シビレちゃう」

そういって、オカマは私をじっと見て、笑った。


「姉さん。この人、堅気なんだから、あんまりどぎついこと、言わないようにね。気をつけて」
「そ。堅気さんなの? それで清楚な感じなんだ・・・。堅気でも、恋があなたをこの時間にここへ来させちゃうんだわね・・・」


姉さんはそういってにんまりして、また、私をじっと見た。

私は、心の中を見透かされているようで、頬を赤くした。






「看板をしまってくるよ」

JJがカウンターを出て、ビルの入り口に出してある看板をしまいにいく。
JJがバーから出て行くと、姉さんは私のほうへくるっと体の向きを変えて私は見た。


「ほら、あんたを待ってたでしょ」
「・・・」
「彼、何回も時計、見てたもん・・・」
「・・・」

「あなた、キレイな肌してるわね・・・」
「私・・・若くないです・・・」

「そんなのはわかるわよ。でも、とても若く見えるわ。肌がキレイ。水商売はさ、若い子でも肌がボロボロの子がいるから。年なんて関係ないの・・・。手入れされた女の勝ち。年なんて・・・。いい女なら、それでいいのよ」
「・・・」

「私なんて、この道、30年もやってるんだもん。女も男もたくさん見てきてるから。いい女には年は関係ないわ・・・」
「・・・」


ドアが開いて、JJが戻ってきた。



「何、話してたの?」
「この道、30年の話」

「そうだよね。長いよね、姉さんは。もう一杯飲む?」
「ブランデイにしようかな・・・ねえ、JJの驕りにして」
「ふん。(笑う)いいよ」

「やった! やっぱり、男はいい女には弱いわね」


姉さんが私に目配せした。



私はJJと姉さんを見つめた。私は、結構、この空間は好きかもしれない・・・。なぜか、心が和む。



「安心して飲んでいいよ。送ってあげるから・・・」
「あら、送り狼に変身しないの? つまんないわね」
「・・・」

「あんただって、つまんないでしょ?」
「私は・・・」

「姉さん。堅気をからかわないようにね」

「ごめ~ん。いつものくせが出ちゃう~」
「ふん。(笑う)」

私も控えめに笑った。



「あらん、笑ったじゃない。かわいい・・・。ねえ、JJ、この子、かわいいわあ。笑顔がすごくかわいい」

「ねえ、まだ酔ってないくせに。ふざけないでよ」

「バレたあ? ねえ、乾杯しましょ。キレイなお姉さんに」
「そうするか」



JJが私用と自分用に、水割りを作って、私たちは三人で乾杯した。
その後、姉さんのオカマ道の話を小一時間聞いて、私はあまりにおもしろいので、大いに笑った。


時間はもう1時を回っていたが、私はJJにタクシーに乗せてもらえばいいと、その時は考えていた・・・。



「じゃあ私はもう帰るわね。ああ、楽しかった。お二人さんで仲良くね・・・」
「気をつけて帰れよ。タクシーに乗せてやろうか?」

「サンキュー。JJ、大好きよ。私のために、タクシー拾ってくれる?」


少し酔っ払った姉さんの肩を抱いて、JJが私を見た。


「すぐ、戻ってくるから。待ってて」





狭い階段を酔った姉さんを抱いて、JJが下りていった。
私は通りの見える窓のほうへ行き、JJと姉さんの様子をみた。JJは姉さんを担いで、タクシーを探している。
やっと拾ったタクシーの中へ姉さんを押し込もうとすると、姉さんは、タクシーに乗る間際、JJの頬にキスをした。

無事に姉さんのタクシーが走り出すと、JJが向きを変えて、通りを戻ってくる。



そして、彼はドリアンの窓の方を見上げた。

窓から覗いている私と目があって、二人はじっと見つめ合った。


私は、なぜか・・・ここで、覚悟を決めなくてはならないような気がした。


あの人が私に向かって歩いてくる・・・。
あの人が、私の中へやってくる。そんな気がして、私の動悸は一気に高まった。








ドアが開いて、JJが戻ってきた。

JJがにっこりした。


「二人っきりになっちゃったね」
「・・・」

「どうしたの?」
「ん? 何でもないけど・・・」
「けど?」

「ごめんなさい・・・うまく言えないわ・・・」


JJは私を見つめながら、カウンターの中へ入った。


「どうする? まだ飲む? 帰る?」
「・・・」

「どっち?」
「どっちかしら・・・」
「どうした? 緊張してるの? 二人きりで」
「・・・」

「来てくれてありがとう・・・」

「私が来ると、思った?」

「う~ん、懸けかな・・・。でも、君は来た・・・一歩前進・・・」
「・・・一歩前進?」
「そう・・・二人の仲が一歩前進・・・」


JJは笑った。

私は、呼吸が苦しくなった。

男に見据えられて、こんなことを言われたことがなかったから・・・。


「私・・・あなたより、年上よ」

「だから?」

「だから・・・」

「君はただ飲みに来ただけ?」
「・・・」

「オレには興味がなかった?」
「興味って・・・」


JJが水を一杯を飲むと、私を見て、カウンターから出てきた。

そして、私の座っているイスを彼のほうへクルっと回した。イスが回転して、私とJJが正面から向き合った。


「オレに興味はない?」
「・・・」

「オレはあるよ。君に・・・」


JJが私の足の間に割って入って、私とJJの顔の距離がより近づいた。


「困らせないで」

「本当に困る? 困るようなら来ないでしょ?」

「・・・こんなこと、初めてだから・・・」

「・・・男に誘われるのが?」


「もっと、お客さんがいっぱいいて、あなたを・・・あなたを観察できるのかと思った・・・」
「それが客は帰って、いなかった・・・」
「そう・・・」

「もっと早く来ればよかった」
「そうね・・・そうだけど・・・なかなか、気持ちが決まらなくて」

「ただ、来るだけなら、気持ちなんて決めてくることないじゃない」
「そうね・・・」
「・・・だろ?」

「私、混乱してきちゃったわ・・・。もう帰ったほうがよさそうだわ」

「一人の家へ?」
「・・・」
「それとも、オレのところ?」
「え?」
「それとも、叔母さんのところ?」
「・・・」

「その服装からすると、叔母さんのところがベストかな?」
「・・・」

「シャンプーがいいニオイだ」

「・・・」

「石鹸のニオイもする・・・」

「・・・」


そんな意味で、お風呂に入ったんじゃないの・・・。



「どこへ行きたい?」

「どこって・・・? こんな夜中に?」


「オレはまだ寝ないんだ。いつもここを片付けてから帰ると、早くて、4時。普段は5時ごろに寝る・・・」

「でも・・・」

「少し待って。ここを片付けるから。そうしたら、二人でどこかへ行こう。車で送るよ」
「・・・」

「どうせ、明日は休みだろ? ここも日曜日は休みだから。 待ってて」


そう言って、JJはカウンターの中へ入り、残りのグラスを洗い、カウンターを拭いた。
彼は、生ごみの袋を縛ると、それを持って、カウンターから出てきた。


「ビルの地下に置いてくるから待ってて」



そして、戻ると、レジの精算をして、現金を銀行の夜間金庫用のバッグに閉まった。

そして、バーの中を簡単に点検すると、私を見て、笑った。



「待たせたね」

「じゃあ、行こうか。トイレはいいの?」

「あ、借りるわね」


私は、彼のペースに飲まれたまま、トイレに向かった。

鏡で自分の顔を確認する。
唇にグロスを足した。



トイレから出てくると、JJがジャケットを持って待っていた。


「行こうか」

「・・・」


ドアを出る時、また彼の胸に肩が当たった。

JJの男を感じる度に私の胸がキュンと痛くなった。



ビルの裏に駐車場があり、彼の車が止まっていた。

セダン型の白のフォードに、二人で乗り込んだ。



「ちょっと、銀行に寄らせてね」

そういって、近くの銀行の前に車を止め、夜間金庫にバッグを入れた。



「さあ、デートしようか」
「・・・」

「まずは・・・海でも行ってみる?」
「え、そんな遠く?」

「もっと近くがいいの? ホテルとか?」
「・・・」


私は困ってしまって、言葉が出なかった。


「まずは、海までドライブ。それがよさそうだな。いいだろう? 夜明けの海が見られるよ」
「ええ」

「じゃあ、行くか。夜の高速はロマンチックだよ。特に、素敵な人と一緒の時はね」
「・・・」



そう言うと、車を発進させた。



「それにしても、そのシャンプーは香りがいいよ」

彼は運転しながら、そう言った。



私には、キスをされるより、その一言のほうが体の中の全てを溶かす効果があった。







3部へ続く




お楽しみに!