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創作を書いたり読んだりと思い思いの時をネット内でゆったりと過ごしています。

 「恋の病2」4部

2015-09-22




人は、

こんな私を見て、
なんと思うだろう

心に空いていた穴に
ぴったりと嵌ったような恋心


恋をすることも
すっかり忘れていたのに


でも・・・

この胸のざわめき

あの人を抱きしめたいと思う気持ち

あの人が触れる女の指を憎らしいと思うジェラシー


これは分析せずともわかる

恋だ


バカげた恋だといわれても

今の私を止めることはできない・・・







ペ・ヨンジュン主演
「恋の病2」4部








最後の客が帰ったのは、12時半だった。

JJはまだ営業時間だったにもかかわらず、早々に店じまいをした。
そして、私のところへ戻ってきた。
私の座っているカウンター席をグルッと回して、私を自分のほうへ向かせた。


「お待たせ・・・」
「・・・」
「どうした?」


そういって、私の髪を撫でて、口をちょっと尖らせて、私を見た。


「どうしたの? ずっと黙りこくって。本当は、帰りたかった?」
「うううん・・・」

私は首を横に振った。


「じゃあ、どうしたの?」


彼は心配そうな目をして、私の顔を覗き込んだ。
私は、ちょっとうつむき加減に、言葉を選びながら答えた。


「苦しいの・・・」
「・・・」
「胸が・・・」
「・・・」
「息ができないくらい・・・」
「・・・」

「あなたは私にここにいてって言うけど・・・あなたは・・・本当に、私が好き?」
「・・・」

「私はあなたを好きになりかけてる・・・。(本当はもう逃げられないほどなの・・・)だから、遊びの相手なんて・・・嫌なの・・・」

「・・・オレは・・・君と恋をしたい・・・」


私は彼の顔を見上げた。JJは真剣な目をして、私を見ている。


「でも、私にはわからないの・・・。なぜ、あなたが私なのか・・・。だって、もっともっと素敵な人がいっぱいいるじゃない・・・」



「おまえは特別・・・」



彼はそういって、私の頬を撫でて、大きな手で顔を包んだ。


「初めて出会ったあの夜・・・。オレは、おまえを見て、驚いたんだ・・・」
「・・・」
「こんなことを言ったら、おまえに嫌われちゃうかな・・・。でも、言ったほうがいいね・・・なぜ、おまえかって・・・。昔の恋人に・・・雰囲気が似てるんだ・・・。目付きも、口元も・・・。こんなこと言って、がっかりした?」


胸がより苦しくなった。


「・・・なぜ、その人と別れたの?」


JJは、私の顔から手を離し、ちょっと首をかしげて、ポツンと言った。

「うん・・・。死んじゃったんだよ、交通事故で」
「・・・」

「あいつの弟も一緒に・・・。二人を乗せたタクシーにね、居眠り運転のトラックが対向車線から突っ込んできて、ぶつかった・・・。それで、全てが終わり・・・」
「・・・」

「こんな話、聞かせたくなかったけど・・・。おまえが年のこととか、いろいろ気にしてるみたいだから・・・。最初はね、彼女によく似ていて、懐かしかった・・・。それで、花屋の前でおまえを見かけた時、ここへ誘ったんだ。一緒にちょっとお茶が飲みたくて・・・。あいつに、ここを見せたかった・・・。でも、その後は、うん・・・。おまえはおまえだから・・・」

「・・・いつの話?」

「もう、5年になるかな・・・」
「・・・」

「あいつの弟がね、心臓が悪くて・・・その治療費を稼ぐのに、ホストをやってたんだ・・・。幼馴染なんだよ、オレたち。普通の仕事じゃ、ぜんぜん金が足らなくてさ・・・借金なんかするより、水商売やったほうがましだろ? 二人で一生懸命働いたけど・・・、その事故で全てご破算・・・。金を貯める意味もなくなっちゃった」
「・・・」

「それで、ホストもやめたんだ、虚しくなっちゃって・・・。あいつさあ、弟ね、オレのサーフィンする姿が好きでさ。たまに車に乗せて、海へ連れてってたんだ。いつか一緒にやりたいって言って。あいつが車で休めるように、ワゴン車買って・・・。でも、それも一瞬で消えた。オレの未来が一瞬で消えちゃったんだ」

「・・・」


「でもね・・・。長い間、ホストなんかやってたから、やめても、なかなか普通の世界には戻れない・・・。それで、バーテンになって、バーを持つことを考えたんだ。だから、このバーは、弟からの贈り物だよ」

「・・・」

「どうした? 傷ついた? おまえを傷つけたくて、話したんじゃないんだ。なんでおまえかって、聞かれたから・・・。そのきっかけを話しただけ。傷つけたら、ごめん・・・。でも、それはただのきっかけなんだよ」


「うん・・・私も、ごめんね・・・」


「?」

「なんか、私、誤解してた。あなたはちゃんとした人だったんだよね・・・」
「そんなことはないけど・・・浮き草は、浮き草だよ」

「気なんて悪くしてないよ・・・。本当の気持ちが聞けて、うれしい・・・」

「そう?」
「うん」


私の目から涙がこぼれた。私の心のダムが決壊し、崩れ落ちるように、私の中から、涙があふれ出した。


「泣くなよ」
「・・・やさしすぎるよ・・・」


「泣くなよ。そんなに泣くなよ」


私の涙がぽたっぽたっと、膝の上に落ちた。
JJが私を抱きしめた。


「それでも・・・それでも、私はもう・・・42才だもん・・・。あなたに初めて会った日が42回目の誕生日だったの」
「そうなの? ふ~ん・・・若く見えるね。オレは、34だから・・・8つ違いなんだ」
「うん・・・」

「それなのに、なんでこんなにかわいいんだろうね・・・。年なんて関係ないよ」

「JJ、私、23の時に一度、結婚したことがあるの。でも、相手の人が酒乱で、2年で別れちゃった・・・。夜になると口汚く私を罵ったの・・・。それがだんだん、暴力を振るうようになって、最後はあばら骨が折れちゃった・・・。それで、お姉さんに相談して、別れたの。父や母が生きていたら、我慢なんてしないで、すぐ別れていたかもしれないわ」

「・・・大変だったね・・・」

「今思うと、あれは、DVだよね・・・。昔は、酒乱で片付けられてたけど・・・。もう、17年前・・・。お見合いですぐ結婚したから、相手をよく知らなかった・・・。それから、ほとんど男の人とまともに付き合ったことがないの」

「・・・」

「だから、うまく立ち回れないの・・・どうしていいかわからないの」
「そう・・・」



そう言うと、JJはやさしく私を抱きしめた。私は子供のように、年下の彼に抱かれている。



「もうそんな古いことは忘れろよ。オレは、今、ユナが好きだ」
「・・・」

「好きになってくれる?」
「うん・・・」


私は、こっくりと頷いた。
でも、その後、JJが真剣な顔をして、私を見据えた。


「でも、まだハードルがあるな」
「何?」

「おまえの目で・・・確めてほしいんだ」
「何を?」

「この先は、ユナが決めろ・・・。オレは、今、おまえがいい。それだけしか言えない」
「・・・」


JJには、何があるというのか・・・。
JJは複雑な表情をして、私をじっと見つめている。


「うちへ来いよ」
「何か、見せたいのね?」
「うん・・・。来てくれるね?」
「うん・・・」


私は頷いた。


「会社は何時から?」
「9時」

「じゃあ、それに間に合うように、おまえの家まで送るよ」
「・・・今日、見せたいの?」

「ああ・・・」

「うん・・・行く・・・。あなたのところへ行くわ」


今、私の中にあふれているのは、JJへの思いだけだ。会社も今の暮らしも全て、二の次・・・。

JJは、私を好きだと言った。
今、私を求めている・・・。私も、あなたが好き・・・。



でも、JJの表情は厳しかった。

彼はいつものように、店の後片付けをした。私たちは裏の駐車場に置いた車に乗って、銀行に寄り、そして、彼の自宅へと車を走らせた。








彼のマンションは、叔母の家とは反対方向で、新しいマンションが立ち並ぶところにあった。
地下の駐車場に車を入れて、私たちは、JJの部屋へ向かった。5階立ての4階の東南。そこに彼の部屋はあった。



「どうぞ、入って」

「お邪魔します・・・」


彼の部屋は、とてもあっさりしていた。生活に必要最低限のものしかなかった。


ここで、結婚生活を始めようと思っていたのか、間取りは3LDKだった。
でも、その中身はガランとしていた・・・。


「よかったら、ソファに座って。あまりものはないけど。ソファとテーブルとベッドがあれば、それでなんとか暮らしていけるだろう」
「うん・・・」




JJは、冷蔵庫から、ミネラルウォーターを出してきた。


「飲む?」
「うん・・・」


彼が二人分、コップに注いだ。

部屋を見回しても、特に見せたいものがあるようには見えなかった。
彼は何を見せたいんだろう・・・。



水を飲み終わると、JJがちょっと間をおいて、私を見た。


「おいで」


彼が寝室に入っていった。


私は、もう覚悟ができている・・・。


彼の後をついて、部屋に入った。





JJは、小さなスタンドの電気をつけて、私のほうを向いて、ベッドに腰掛けた。


「これから、おまえに見せたいものがあるんだ・・・」


彼の目がじっと私を見据えている。


「・・・なあ・・・に?」


私は、胸がざわめいた。


「うん・・・。おまえもここに座って」


私もJJの隣に向かい合うように座った。 



JJがシャツを脱いだ・・・。

目の前に、彼のたくましい胸が見えた・・・。
そして、肩が・・・。

そして・・・タトゥが・・・。


左肩を中心に胸から背中へ、そして、二の腕に、ドラゴンが描かれていた・・・。



彼は、じっと私を見つめている・・・。
私もじっと・・・そのタトゥを見つめた・・・。



「どう?」
「・・・」


彼は、私に判断を任せている・・・。これから先、付き合うのか・・・別れるのか・・・。


私は言葉にならなかった。


何を判断したらいいの・・・。
何を選んだらいいの?


「ユナ」
「ごめん・・・どうしたらいいの、私・・・」

「駄目?」
「うううん・・・」


私は首を振った。


「・・・」
「JJ、私に選ばせないで。私に答えを出させないで」
「・・・」
「私は・・・あなたが好き・・・それだけ・・・」




JJがゆっくり私に覆いかぶさって、ベッドに押し倒した。そして、彼が私を上から見下ろした。

彼は・・・美しかった。そのタトゥも含めて、全てが美しかった・・・。



「平気? こんなオレでも」
「・・・」


私は答えず、指で彼のタトゥをなぞった。


「ねえ・・・」

「・・・JJ、私、もう引き返せないの・・・」
「・・・」
「あなたが好きで・・・気持ちが、引き返せないの」



私を見下ろす彼の目をじっと見つめた。


「・・・抱いて・・・」


JJはちょっと切なそうな目をして、私の目を見つめて、髪を撫でた。


「いいの?」
「いいの。抱いて。抱いてほしいの、あなたに・・・」
「・・・」


JJはじっと私の目を見つめていたが、私のブラウスのボタンを外した。


いいの・・・もう私の心はあなたのものだもん・・・。
あなたに愛してほしいの・・・。



彼がブラジャーを外した。


「ユナは、キレイなままなんだね・・・」
「・・・」



JJが私の胸を見て、そう呟いた。 

私はその言葉に涙が出た。
忘れかけていた愛を、今、手にした・・・。


私はまだ生きているんだ・・・。


彼の首に腕を回して、力いっぱい彼を抱きしめた。



「愛してる・・・愛してる・・・今、それがわかった。あなたを愛してる・・・」
「・・・ユナ」


彼が唇を重ねた。



彼の肩のドラゴンは、彼の血管が浮き上がると、まるで生きているように、輝いた・・・。

そして、それは、私を見つめていた。


「JJ・・・」
「おまえが好きだよ・・・。今のユナが好きだ」


彼はそう言った・・・。









私は生まれたままの姿で、彼の腕の中で眠った・・・。

足と足が擦りあって、彼の男らしい足の感触が私を幸せにする。
彼の厚い胸が、太い腕が、私を女にしてくれる・・・。




目覚ましが鳴って、JJが目を覚まし、少し起き上がった。


「ユナ、時間だよ」
「うん・・・」

「ユナ」
「ごめん・・・もう少しだけ、こうしていて・・・」

「ふん。(笑う)早く起きろよ」
「もう少し・・・」



私は、本当に疲れていた。

もちろん、彼の腕の中は心地よかったが、たぶん、多少の気疲れがあったのだと思う・・・。私は本当に目を開けることができなかった。


「わかった。もう少しだけね・・・」
「うん・・・」


そういうと、私は、また彼の腕の中で眠りに落ちた。
さっきと違ったことといえば・・・彼が私を抱いたこと・・・。

眠っているというのに・・・私は女だった・・・。









彼に送られて、自分のアパートに戻り、会社の始業時間には支障なく出勤することができた。


でも、デスクに座って、仕事をしながらも、頭の中はJJのことだった。


昨日のことを思い起こす。

たぶん、あれでよかったのだと思う。
彼を好きなのだし・・・それでよかったんだ・・・。

彼が私にタトゥを見せて、私に覆いかぶさったことを思い出すと、全身が燃えるように熱くなった。


職場のデスクで、私は一人、赤い顔をした・・・。

決算も終わって、仕事も楽になったので、周りもゆったりとした雰囲気だ。
その中で、私は一人、昨夜を思い出し、頬を火照らせている。



「パクさん、どうしたの? 体調でも悪いの?」
「え? ・・・かもしれないわ・・・」

「顔が赤いわよ」
「うん・・・」

「熱かしら?」


私は、向かい側に座っている25才の彼女の顔を見た。

彼女には、私の頭の中はわかるまい・・・。
でも、明らかに、年増の女を見下した目をしている。


「風邪かもしれないわ・・・。ちょっと頭痛もするの」
「早退したら。今、忙しくないんだし」

「そうねえ・・・」


早退・・・その言葉に、JJを思い出し、私は、今すぐ会いたくなった。


「今日は帰ろうかな・・・」
「そうしたほうがいいわ。お大事に」


課長が私を見た。


「めずらしいねえ。パクさんが早引きするなんて」

「すみません・・・」
「いいよ。いつも無遅刻・無欠勤なんだから」

「課長? 私に対する当て付けですか?」
「まさかあ! ジウォンちゃんに言ってるわけじゃないよお」


「では、お先に失礼します」


私は立ち上がった。

皆は目礼しただけだった。







私はロッカーへ行き、帰り支度をした。
時計は、2時半を回っていた。

これから、JJがバーに出勤してくる。

私は少しでも早く彼に会いたくて、急いでロッカールームを後にした。





「オバサン、帰っちゃったね」


25才のジウォンが言った。


「その言い方はひどいよ」
「でも、きっと更年期かなんかよ」
「辛辣だなあ」
「そうに決まってる。うちのママも、顔が火照るって言ってたもん」


私が経理の前を通りかかると、そんな会話が聞こえてきた・・・。


「何言ってるのよ。この間、営業のキム君が、『パクさんてキレイだよなあ』って言ってたから、あなた、妬いてんでしょ?」

「違うわよ!」
「全く!」


経理の皆の笑い声が聞こえた。



そう・・・。キム君、そんなこと言ったんだ・・・。


私はちょっとうれしかった。
JJだけでなく、他の若い男に認められたことが自信につながった。



早く、ドリアンへ行かなくちゃ!

私は弾むような思いで、会社を後にした。








ドリアンへの階段を駆け上ったのは、午後3時10分だった。

私は、心を落ち着かせて、ドアを開いた。

店の仕込みをしていたJJが振り返った。


「・・・どうしたの?」

「来ちゃった・・・」
「・・・」

「会いたくて・・・会いたくて来ちゃったの」
「仕事は休んだらいけないよ」
「うん・・・ごめんね。でも、どうしても、会いたくて。早退しちゃった」


JJがやさしく微笑んだ。


「ふん。じゃあ、ここで働くか?」
「うん・・・なんでもする」

「なんでも?」
「うん・・・」

「じゃあ、トイレ掃除をよろしく!」
「え?」

「なんでもするんだろ?」
「うん・・・いいよ」


私は自分でも驚くくらい、快活に微笑んだ。


彼の店を一緒に準備することがうれしい・・・。
まるで、彼と私が一つになったようだ・・・。



洗面所に入ってすぐ、目にした鏡に映った私の顔は、輝いていた・・・。

そして、華やかな雰囲気まである。
JJの愛の力で、私はこんなに幸せな顔をしている・・・。

幸せが胸いっぱいに広がった。




トイレ掃除を丁寧に済ませて、バーに出ていくと、JJがうれしそうな目をして、私を見た。


「ご苦労さん」


私はうれしかった。









そこへ、いきなりドアが開いた。


「JJ、ごめん! 匿って!」

「どうした?」


20代後半の女が飛び込んできた。

そうだ。この間、ここで、JJの手相を見ていた女だ。


女は私に気がついて、一瞬躊躇したが、緊急のようで、私を無視して、JJにすがった。


「助けて!」

「何かあったの?」

「喫茶店であいつと別れ話してたら・・・殺してやるって」
「・・・」

「急に人が変わっちゃって、いきなり、水をかけられたの。それで、てめえ!って、手を出してきたから、目の前のコーヒーカップ、投げつけちゃった。・・・どうしよう。あいつ、いつもナイフを持ってるから・・・。逃げてきたけど、ここだってすぐわかっちゃうかも。バレちゃうかも。いつもここで飲んでるの、知ってるから・・・」

「ウンスか?」
「そう・・・」

「あいつは・・・」


JJが少し考えて、私と女を見た。


「仕方ない。もう逃げてる時間がないな・・・。こっちへ来い。ユナもおいで!」



私たちは、カウンターをくぐって中へ入り、その奥のドアを開けた。


「ここにおとなしくしてろよ」
「・・・」

「ユナも出てきたら駄目だよ。わかったね」
「うん」

「彼女を見てあげて」
「わかった・・・」


私とその女は、奥の間の3畳に隠れた。ここは休憩室のようだ。

JJがドアを閉めて、知り合いの刑事に電話をしている。


「ああ、おじさん。JJ。 ウンス、知ってるよね? そう・・・(声を小さくして)少年院出の・・・。うん。今、ナジャが別れ話をしてたら、急に人が変わって手を出してきたって、うちに逃げ込んできたから・・・。何度もやってるからね・・・」


小声でJJが電話で話している。

携帯で移動しながら、ドアの鍵をかった。そして、窓から外を覗いた。


「じゃあ、よろしく・・・。うん、おじさんが来るまでは鍵は開けないよ」



私と女は、奥の部屋からそっとJJの様子を見ている。


「どうしよう・・・。一歩出たら刺されるわ・・・」
「そんな・・・」
「そうよ、きっと。あいつ、すごく気が短いの・・・」
「・・・」


JJがドアを開けた。


「おじさんが来るまでここにいろ。今、パトカーで向かってくれるそうだから」
「・・・」

「パトカーには手は出せないだろ」
「どうかな・・・」

「ユナ。悪いね。彼女を見てやってくれる?」
「ええ・・・でも、大丈夫?」

「たぶん・・・たぶんね・・・」


JJがそう言うと、ドアをドンドン叩く音がした。



「あれはおじさんじゃないな・・・」


JJの目がきつくなった。


「JJ・・・」
「大丈夫。もうすぐおじさんが来てくれるはずだから。おまえたちはここから一歩も出るな。ちゃんと鍵をかけること。いいね? オレかおじさんが声をかけるまで、静かに。いいね?」
「・・・」


「ドアの鍵がもてばいいけど・・・」


そう言って、JJがドアを閉めた。


私は中から鍵をかけた。


「あんた、JJの彼女?」


私は頷いた。


「ごめんね・・・巻き込んで。JJが、JJが、付き合うなって反対したのに・・・危ないって・・・。それなのに、私」
「・・・」


私は、女を抱きしめた。



私も胸が痛い・・・。

JJに、JJに、もしものことがあったら・・・。


「なんとかなるわよ・・・。きっと・・・きっと・・・」



泣き出したいのは、私のほうだった・・・。








5部へ続く・・・