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創作を書いたり読んだりと思い思いの時をネット内でゆったりと過ごしています。

 「恋の病2」7部 最終回

2015-09-22
人は、

こんな私を見て、
なんと思うだろう

心に空いていた穴に
ぴったりと嵌ったような恋心

恋をすることも
すっかり忘れていたのに


でも・・・

この胸のざわめき

あの人を抱きしめたいと思う気持ち

あの人が触れる女の指を憎らしいと思うジェラシー


これは分析せずともわかる

恋だ

バカげた恋だといわれても
今の私を止めることはできない・・・





ペ・ヨンジュン主演
「恋の病2」7部




バーに戻ってくると、JJと目が合った。

私は微笑んだが、JJはじっと真顔で私を見つめている。
カウンターに入って隣に立っても、ずっと黙ったまま、私の顔を見つめていた。


「・・・?」

「何を話したの?」

「え?」

「姉さんと何話したの?」
「・・・別に」
「・・・」

JJが深いため息をついた。


客が入ってきて、私たち二人はまたバーテンに戻った。
JJは客を相手に快活によく話したが、私の顔を見る目はなぜかやるせなかった・・・。





12時を過ぎて客足が遠のくと、いつもより早めに店じまいをしようとJJが言い出した。
私も初出勤だったので、彼の言う通りにした。
JJに代わってレジをチェックして、売り上げとつり銭の計算をした。

JJは、私のお金を勘定している姿をじっと見つめている。


「ユナは計算が速いね」
「だって、会社でもこんなことばかりだもん」
「・・・」

「できた。ピッタリ!」

「ありがとう。じゃあ、もう閉めていくか」
「うん」

「疲れただろ?」
「うん。なんか緊張したせいかな。肩がこっちゃった。足も棒みたい・・・」
「立ち仕事だからね」
「うん・・・」

「うちへ帰ったら、足を揉んでやるよ」
「いいわよ。左手が利かないんだから」

「それでもやってやるよ。さあ、帰ろう」

JJがやさしく微笑んだ。









家へ帰ると、私たち二人はベッドに倒れこんだ。


「ああ、疲れたなあ。久しぶりだと疲れるなあ・・・ユナも、疲れただろ」
「うん」

「・・・。足貸してごらん」
「うん・・・」

私は、パンツを脱いで、足を隣に寝転ぶJJのお腹に乗せた。

「はい!」

「重い!」

「苦しかった? ごめん・・・」
「大丈夫だよ。ふくらはぎを揉むか?」
「うん・・・」

JJの大きな右手が私のふくらはぎを揉む。

「どう?」

「気持ちいい・・・反対も」
「よし・・・」

「・・・気持ちいい」



「ユナ・・・」
「なあに?」

「姉さんと、何、話してたの?」
「別に。 大したことじゃないわよ」
「・・・じゃあ・・・言えるだろ?」
「う~ん・・・忘れた。だから、大した話じゃないのよ・・・」

「・・・窓から姉さんの顔が見えた・・・。たぶん、おまえもあんな顔して話していたはずなんだ・・・」
「・・・」

私が泣いた時、姉さんももらい泣きしそうになって、目を潤ませた・・・。


「話してよ」
「・・・」

「・・・」
「頑張れって・・・」
「・・・」
「JJを好きなら・・・迷わず・・・頑張れって・・・」
「・・・」
「そう言ってくれたの・・・」
「うん・・・」

「だから・・・」
「・・・」
「私はもう迷わないわ・・・」
「・・・」

JJが私の顔を見つめた。


「・・・迷ってたんだ・・・」
「・・・」
「ずっと?」
「・・・」
「オレといることを迷ってたの・・・?」

「そうじゃないの・・・。JJ、あなたを愛していることに迷いはないの・・・」
「でも・・・何かが割り切れなかったんだね?」

「・・・ごめんなさい・・・」

「オレが前に言ったこと?」
「・・・」
「昔の彼女に似てるって」
「・・・」
「そうなの?」

「あなたが、ホントに私でいいのか・・・ユナでいいのか・・・」
「当たり前だろ? ユナ、オレはぜんぜん迷ってないよ」
「・・・」
「ユナを、おまえを愛しているから」
「・・・ごめんね・・・自分に自信がなくて」

「そうだね・・・。ユナが時々オレを見る目が・・・やるせない時があった。・・・オレもおまえの気持ちが揺れているのがわかった・・・それがとても心配だったよ・・・」
「・・・」

「でも、オレにはおまえがオレを好きなのはわかるんだ・・・おまえがたとえ、迷っていたとしても。オレには迷いなんてないよ。おまえとこうしていることが自然に思えるから。おまえは、オレがおまえを好きになったきっかけを気にしてるんだね」
「・・・」

「きっかけはきっかけだよ・・・。おまえと出会えて、本当によかったと思ってる」
「・・・」

「おまえが好きなんだ・・・。ユナ。彼女とおまえはまるで違う。全くの別人だよ。性格がまるで違うんだよ」




「こうして、おまえの足を揉んでいるのだって・・・オレは楽しいよ」
「・・・」
「ユナは、オレにとっては大切な人だから・・・」
「・・・JJ・・・」

「うそはないよ」
「・・・」
「おまえを思う気持ちにうそはない・・・」
「・・・・」


JJはそう言って私の足をやさしく揉み続けている。


「うん・・・。あなたを信じる・・・あなたを疑っていたんじゃないの・・・これは、私自身の気持ちの持ち方なのよ」
「・・・うん・・・」

「JJ、ずっと近くにいて、いいよね?」
「・・・」


JJの返事がないので、私は体を起こして、彼の顔を見た。
JJの目が潤んでいた・・・。


「ずっと好きでいていいよね?」
「うん・・・」
「ありがと・・・」




私たちは静かに見つめ合った。
JJの止まった手がまた動き出して、ふくらはぎから移動して私の内股を撫でた・・・。


私は起き上がって座り、寝ているJJの顔を見下ろした。
彼はじっと私を見つめている・・・。

私はシャツをゆっくりと脱いだ。ブラジャーを外して横に置き、じっと彼の目を見つめた。
JJのシャツのボタンを一つ、一つ、ゆっくり外していく。JJはただ私を見つめているだけで、私にされるがままになっている。シャツの胸を開いて、私はやさしく胸からお腹へと鳩尾を通って、ゆっくりと指でなぞった。

彼の胸が、お腹が、波打った・・・。

彼の目を見つめたまま、私は彼のジーンズのベルトを外し、寝たままの彼のジーンズを下ろした。

JJはじっと私を見つめている。まるで、私の愛を確かめようとするように・・・。


私はショーツを脱いで全裸で、彼の上に跨った。
そして、JJの手を掴んで、私の乳房の上に置いた。


JJはゆっくり私の胸を掴んで撫でた。そして、私の体の線をなぞるように、胸から脇を通ってウエストを通り、太腿を通ってまた内側へ移動した。


「ジョンジェ・・・」

私は小さく彼の名を呟いた。


「オレを丸ごと、おまえにやるよ」

JJが私を見つめて言った。

「・・・」

「パク・ユナに・・・全部。オレの全てを」

「・・・ジョンジェ・・・」


私の目から涙がこぼれた。








私たちはより深く愛し合ったが、その間もずっとお互いの目を見つめ合っていた。
お互いの愛を監視するように・・・。お互いの愛を確認するように・・・。

下にいる彼の目を私はまるで睨みつけるように、じっと見つめて。
私はこんなに強い意志を思って、自分から人を愛したことは、これが初めてだった・・・。








昨晩は、あんなに見つめ合っていた私たちだが、一晩経って、今朝は何事もなかったように、二人でブランチを取って過ごしている・・・。

ただ、私の心には平安がやってきた・・・。
JJは、私を、ユナを愛しているという確信が・・・自信が持てるようになったから。


「ユナ、消毒変えてくれる?」
「うん、いいわよ」

私は、上半身裸のJJの包帯を解く。傷がどんどん回復してきている。

「治ってきたね」
「うん」

「沁みる?」

私は消毒液で傷口を消毒する。

「大丈夫。ユナはナースにもなれそうだな(笑う)」
「・・・なれるわよお・・・JJだけのね」

私も笑った。昨日も一昨日もその前も傷口のガーゼを変えた。でも、今、この二人の間に流れる、しっくりとした雰囲気は、きっと昨日の愛の確認があったからだ。

JJが少し腕を回してみた。

「駄目よ、まだそんなに動かしちゃ」
「大丈夫だよ、このくらい」
「もう少しの辛抱だってば。あ、ドラゴンさんの顔がちゃんと治ってる・・・よかったね」
「ユナはそんなこと、気にしてたの?」

「これもJJの一部だもん・・・。さ、包帯するわよ」
「よろしく、お姉さん」
「ひど~い。人が気にしてることを簡単に言うのね。・・・JJのバカ」

私はそういいながらも、実はそれほど怒ってはいなかった。もうJJと私の間には、年齢なんて関係ないことはわかっているから・・・。


「ユナ」
「なあに?」

私は包帯を巻きながら、JJに返事をした。

「ジョンジェでいいよ。昨日みたいに」
「・・・」
「JJじゃなくて、ジョンジェで・・・」
「・・・」

「オレを丸ごと、おまえにあげたんだから・・・おまえにはそう呼んでほしい」
「・・・」

私は胸が詰まった。


何度も呼びたかった名前。
ただの通称ではなく、私の男として、呼びたかった名前・・・。


「ジョンジェ・・・」
「そう・・・それでいい・・・」
「・・・うん・・・」







それからしばらくして、まだ包帯は巻いているものの、ジョンジェの腕もだんだん動くようになってきた。

私はいつものように、バーの準備をして、ビルの一階に看板を出しに行き、看板のライトのスイッチを入れた。
すると、背後から声がした。

「ユナ・・・」
「・・・」

私が振り返ると、お姉さんが立っていた。

「お姉さん・・・」
「あなた、こんな所で、何やってるの・・・。会社も休んで、家にもいなくて・・・まさかあの男と・・・」
「あの男と・・・?」
「そんな格好して、バーテンでもやってるの?」
「ええ。今の私の仕事はバーテンよ」
「・・・ったく・・・あなたって子は・・・」

私とお姉さんが睨み合っていると、階段の上からジョンジェの声がした。

「ユナ!」

「あ、ジョンジェ」
「どうしたの?」
「今、お姉さんが来たの」
「店へあがってもらったら?」

「うん。お姉さん、店のほうへ来て。2階」
「・・・」



私は叔母を案内して、ドリアンへ戻った。
叔母は、店内を見回している。


「お姉さん、座って・・・あ、まずは紹介ね。こちら、ハン・ジョンジェさん・・・。私の叔母」
「叔母のチャン・ウンジュです」
「初めまして。ハン・ジョンジェです・・・。どうぞ、おかけください」

「お姉さん、座って」

ジョンジェがコーヒーを入れようとした。


「やるわ。私がやる」

私は急いでカウンターの中へ入った。叔母がきつい目をして、私たちを見つめた。


「今、ジョンジェがケガしてるでしょう・・・だから、私が手伝ってるの・・・」

私はサイフォンにランプを当てながら、呟くように言った。

「彼のコーヒーはおいしいけど・・・今日は私ので我慢してね」


「ユナ。どんなつもりでこんなこと、しているの? 会社は有給をとってずっと休みだし、電話にも出ない・・・あなた、携帯は無くしたの?」

その言葉にジョンジェが私を睨みつけた。
彼にはそのことを内緒にしていた・・・。再三、叔母からの電話があっても、私が一切出ていなかったことを。


「どうして出なかった?」
「邪魔されたくなかったのよ・・・」
「なんで・・・」
「・・・あとで話すわ・・・二人の時に」


「いったいどういうつもりなの?」
「お姉さん、見た通りよ。好きな人を手伝っているの。彼がケガをしたから、手伝っているのよ」
「チンピラに刺されるような・・・」
「お姉さん! 誤解しないで。お客さんを助けようとして刺されたの。だから、直接、ジョンジェとは関係ないの」

「でも、そんな危険な客が来るような所でしょ?」
「お姉さん。ジョンジェとあの男とは、人間の種類が違うの。間違えないで」

「でも、私は見ましたよ。あなたの刺青。あんなりっぱなものを彫っているんですもの・・・疑いたくなりますよ」
「・・・」

「この子は一度結婚には失敗しましたが、真面目な家庭で育った子なんです。ちゃんと大学まで出して・・・今も、ちゃんとした会社に長く勤めていて・・・」

「それがどうしたの? だから、なんなの? ずっと長い間、代わり映えのしない仕事を繰り返し、繰り返し、続けているだけよ。周りはどんどん若い子に変わっていって・・・今ではたった一人のオールドミス・・・。そんなのが楽しいと思ってた? そんなのが素敵な勤めだと思ってた?」

「・・・」

「それより私は、本当に愛してる人と一緒にいたいのよ」
「ユナ・・・あなた、この人をよく見てごらん。こんなに若いのよ・・・」

「だから?」
「続かないわよ・・・」
「それだっていいじゃない・・・。何にもない、ただつまらない、味気ない人生を漫然と続けるよりは・・・」
「・・・」

「叔母さん・・・。ユナのお姉さん。僕は、ユナを幸せにする自信があります。だから、安心してください」
「何ですって?」

「僕たちは愛し合っているんです・・・。あなたから見たら、水商売で彫り物があって・・・年下で・・・。でも、僕らにはそんなことは関係ない・・・。確かにグレた時代がありました・・・。大切な人たちを失って、自暴自棄になった時があった・・・。でも、今の僕を見ていただきたいんです」

「お姉さん。彼は一人でこれだけの店を切り盛りしているの・・・。とても頑張っているの・・・。私たちは私たちでやっていくわ・・・大丈夫」

「ユナ・・・」

「もう、私は十分大人でしょ? 任せて。彼は、ジョンジェは素敵な人だから・・・」
「・・・」

叔母は黙って、私の差し出したコーヒーを飲んだ。




もう誰にも私たちを引き離すことなんてできない。

たとえ叔母が心配しているように、私が先に年老いて捨てられたとしても・・・
私は後悔なんてしないわ。
こんなに人を好きになることを教えてくれた人だもの。
こんなに幸せをくれた人だもの・・・。



「帰るわ」
「お姉さん」
「自分でよく考えなさい。あなたの人生だもの。仕事のことも、これからの暮らしも」
「ええ・・・そうします。私の人生だもん。人に責任なんて押し付けない。自分でしっかり立ってみせるわ」
「うん・・・」

「お姉さん。許してください・・・。そして、僕とユナを祝福してください」
「・・・」


叔母は複雑な顔をしてジョンジェを見た。そして、何も答えず、少し肩を落として帰っていった。




「ジョンジェ・・・。私・・・今を大切に生きたいのよ」
「うん・・・」

ジョンジェが頷いた。そして、少し俯いて考え事をしていたが、顔を上げて、私を見た。


「ずっと一緒にいてくれるね?」
「ええ」
「何があっても」
「ええ」

「オレの家族になってくれる?」
「・・・ええ・・・」

私は涙が出てきた。

「ありがとう。ユナは、最高のパートナーだね」
「・・・うん、ジョンジェも・・・」


私はジョンジェの胸に抱かれて、うれしさに泣き崩れた。











今、私は、2歳の娘とやさしい夫に囲まれて、平穏で幸せな日々を送っている。
3年前まで、自分の子供さえ諦めていた私が、子供を産みこの手で抱いた。
そしてまた二人目の子供を授かって、今では、妻であることも母親であることも、当たり前のように過ごしている。

夫とは共稼ぎで、私は会社勤めでの経理の知識を生かして、近所の花屋の経理と、仕立て屋の経理を週に一回ずつ定期的に見て廻っている。そして、昼過ぎには娘を叔母に預けて、夫の仕事を手伝っていく。

第二子を授かってからは、私も前ほどフットワークがよくないので、もう少ししたら、仕事を減らして、娘の世話をしながら、臨月を迎えようと思っている。





「お姉さ~ん、こんにちは」
「ああ、来たの。ジェナちゃん、おいで。ユナもなんか冷たいものでも飲んでいきなさい」
「うん」

叔母が笑顔で、私と娘に冷たいお茶を出した。


「もうあなたもそろそろ休みなさいよ」
「うん、わかってる。でも、あと少し」
「あんたはいつもそう言って頑張っちゃうんだから。でも、もう若くないんだから、休み休みしないとね。妊娠中毒症にでもなったら、それこそ大変」

「わかってるって。でもね、やっと軌道に乗ってきたところでしょう。だから、お店が気になっちゃうのよ」

「ホントに心配性なんだから。・・・頑張るね・・・」
「・・・」
「やっぱり・・・いい人に出会えたんだ・・・。ユナが一生懸命になれる・・・」
「・・・」

「でも! 店は、ダンナに任せなさい。それに、人も雇っているんだから、安心して休みなさいよ」
「うん・・・」

「カフェ・バー、うまくいってるんでしょ?」

「それは、順調。今度のところは、オープンカフェだから、こんな天気のいい日は、結構お客さんが来るのよ。昼ランチに来た人がね、夜も来てくれるの。オカマさんも来るけど、ふん。(笑う)主婦も安心して飲みに来られる雰囲気だって好評」

「ユナがお店に立ってると安心なのかもね。あんたはちっとも水商売っぽくないから。でも、そのお腹じゃあ、もうやめたほうがいいわ」
「うん。お客さんにも言われちゃった。ママはもう引っ込んでって。かわいい子産んだら、出てきてよって」

「そう・・・。ということは・・・ここに二人来るのお? 困ったわ」
「私もちゃんと面倒見るわよ。もう二人だもん! 安心して!」




「ああ、いいお天気ねえ・・・。もう初夏ね・・・。あのお店で、コーヒーやお酒を飲んだら気持ちいいでしょうね」

叔母は、リビングから見える晴れ渡った空を眺めている。








3年前、突如私に訪れた恋。

私は、それまでの自分を振り切るように、彼に走った・・・。そして、私の人生は180度変わった。

いつも同じところから前へ歩み出すことさえできなかった、臆病な私は、あの日、どこかへ消えた・・・。




「あ、電話だ。もしもし。今、お姉さんのとこ。もう終わったの? うん・・・。これから車でそっちへ回る。うん、じゃあ」

「どうしたの? ダンナ?」

「うん。今度ね、カフェの庭に少し木を入れて趣きを作ろうって話してたの。オープンの時は、そこまでお金が回らなかったから・・・。今、植木屋さんと木を選びに行ってるのよ。もう終わったそうだから、これから、拾って店へ行くわ」

「ご苦労さん。運転、気をつけなさいよ」

「うん。じゃあね。ジェナ。お姉さんと仲良く待っててね」
「早めに、お店、切り上げて帰ってきなさいよ」
「うん、わかってる。もう、そんなに心配しないで。じゃあね!」





私は車で夫を迎えにいく。


彼は、道端で植木屋の親方と話をしていた。


「ジョンジェ!」


私は車の中から声をかけた。

彼が車に気づいて、植木屋に挨拶をすると、車のほうに向かって歩いてくる。
いつも通りのやさしい笑顔で・・・。



「お待たせ。どうだった? いいのあった?」
「うん、なかなかいい庭になりそうだよ」
「そ? よかった」

「運転代わるよ」
「いいのに・・・」

「代わるよ」
「うん」

私は、運転席から出て、助手席に移った。



「楽しみだね。また一つ、お店が素敵になるね」
「これもママのマネージメントのお蔭かな」
「もう、口がうまい!」
「ふん。(笑う)」





夫のジョンジェの事業は今、順調だ。

前のバーから、子供が生まれるのを機に新しいところへ移転した。自分たちの子供も出入りできる店。そんな発想から、同じ駅でも少し奥まったところに広めの土地を購入した。

天気のよい日はオープンカフェになるように、表の大きなガラスの格子戸にはかなりお金をかけた。

今では、昼は主婦でもランチが楽しめるカフェ・バーだ。夜も温かな日はそのままオープンにして、夜風にあたりながら、ワインやビール、カクテルを味わう。夜もメニューを増やし、ここでデートを楽しむカップルも増えた。

奥のカウンターはイギリスのパブ風だ。その奥に、ジョンジェがいて、おいしいカクテルを作る。

オープンコーナーが好きな人もいれば、ジョンジェの作り出すバーの雰囲気に酔いしれる人々もいる・・・。

もちろん、姉さんは常連だ・・・。

ここの店がドリアンと違ったところといえば、そこに愛があることだ・・・。




「ホントにいい天気だね。ユナのお腹が爆発する前に、どこか行こうか、三人で」
「どこ?」
「海でも見に行くか?」


ああ、あの日の海・・・。



「うん、そうしよう」
「よし、今週の日曜日は出かけるぞ」
「うん」

ジョンジェはうれしそうに私を見て笑った。







私は最近、こう思うのだ。

私は確かにあの人に似ていただろう・・・。

でも・・・よく考えれば、あの人が私に似ていたのだ・・・。
私のほうが、先にこの世に生を受けたのだから。

ジョンジェは、私に出会うために、あの人と恋をした・・・。
それが運命だった。

二人の幸せは、私とジョンジェが出会えて、初めて始まるのだ。
その出会いのために、それまでの人生があった・・・。



だから、私はこの幸せを大切にする・・・。

よりジョンジェが幸せになるように・・・。
娘たちが幸せになるように・・・。


だって。

そこに、私の幸せと愛があるのだから・・・。









The End