就職活動されている学生さんへ

2022-03-08
昨年のPCF-Jでは、初めて、学生さんと企業の現場の研究員が話せる場(フォーラム)を設けました。ご参加いただいた学生さんや企業からは、とても良い評価をいただいております。

ここでは、なぜ、PCF-Jがこの企画を行ったのか、その背景を説明したいと思います(*)。就職活動中の学生さんや、会社の採用ご担当者様の参考になればと思います。

目次
(1)海外では、学会=就活
(2)〇〇ナビ依存からの解放
(3)良い会社は、ひとりひとり違う
(4)「鶏口牛後」も良いかも?
(5)サークルの先輩よりも親戚のおじさん・おばさん
(6)入社後のほうが大切
(7)卒業研究はしっかりやろう

(1)海外では、学会=就活
自分が海外の製薬企業に勤務していた際、会社に提出する学会参加理由は「リクルート」でした。日本では情報収集だと思います。Society(会)やAssociation(協会)= Academy(学会)ではないのですよね~~~。
理系の学生にとって、実際の企業研究者を知るための最もよい機会は学会です。特にポスター発表では、「生の」企業研究者と密なコミュニケーションをとることができます。「日本の」インターンシップや会社説明会は、建前重視のご挨拶のような感じだと思います。「生の」企業研究者を知りたければ学会が一番です。
企業も、海外のように、学会で「求人ブース」を出されては?と思います。

(2)〇〇ナビ依存からの解放
ほとんど学生さんは、〇〇ナビを使用していると思います。〇〇ナビ経由でないとエントリーシートを受け付けない企業もあるでしょう。〇〇ナビ自体は、現代社会において必要だと思います。しかし、かなりの学生が、知らないうちに〇〇ナビ依存症に陥っているように思います。
おそらく、〇〇ナビからは毎日のように、たくさんのダイレクトメールが届いていると思います。「人気企業ランキング」「内定獲得状況」などなどです。中には、同じ大学・学部の状況を送ってくる場合もあるようですね。結果として、学生は、何十社にもエントリーシートを出すことになり、同じ大学の同じ研究室から、同じ会社の同じ部署に、エントリーシートが何枚も送られてくるという事態になっているようですね。
〇〇ナビからの「競争心」や「不安」を煽るメールには、あまり気を取られないほうが良いと思います。実際、ここ数年、求人倍率は1.0を大きく上回っており、学生さん全員が就職できる状況です。学生さん、安心してください!(企業の方が、本当は焦っているかもね(笑))
現在、3年離職率は3割程度という残念な状況です。学生時代の貴重な時間を何か月も使って、また、社員の膨大な時間を費やして、このミスマッチ率ということは、現在の就職活動はどこかが間違っているということです。(年寄のようで言いたくないのですが、正直、昔のほうが良かったのでは?)

(3)良い会社は、ひとりひとり違う
学生さんも企業も、実に多様です。なので、人気企業ランキング上位の企業が、すべての学生さんにとって良い企業ではないのです。
学生さんの「やりたいこと」ができて「成長」できる企業が、その学生さんにとっての「良い企業」なのでは?と思います。

(4)「鶏口牛後」も良いかも?
現在の社会では「よらば大樹の陰」は通じません。実際、大企業が次々とリストラをしていますよね?会社を、現在の会社のスペック(?)で選ぶのは賢明ではないように思います。ならば、「鶏口牛後」という考え方もあります。海外では、優秀な学生はベンチャー企業に行きます。
もう一つ、大切な点は、「職業に貴賎なし」ということです。どの職業も、社会に必要とされているから存在しています。
ですので、周りからの評判やブランドイメージなどにはあまり捕らわれず、ご自身にあった就職先を選択されるのが良いと思います。
また、社内に大学の先輩や知り合いがいると、入社後にいろいろと助けてもらえますし、相談にも乗ってもらえるでしょう。あるいは、学会で知り合いになった人でも良いかもしれないです。もしそういった人がない場合は、「是非来てほしい」と言ってくれた会社に行きましょう。きっと大切にしてくれると思います。

(5)サークルの先輩よりも親戚のおじさん・おばさん
就活の際、1-2学年上の先輩に相談をする学生さんが多いようです。そもそも人間は、思春期になると、親の言うことよりも、周りの友達や先輩の影響を受けるようにできています。実際、年齢が近いほうが話しやすいでしょうし、よいアドバイスをもらえるかもしれません。ただ、入社1ー2年目では、正直、会社のことは本当によくは、わからないのではないでしょうか?
ところで、親や親戚を「社会人の先輩」として考えたことはありますか?あなたのことをもっともよく知っていて、あなたの最大の味方である「ベテラン社会人の先輩」からアドバイスをもらうのはいかがでしょうか?あるいは、社会人経験が豊富な先生も最近では増えていますから、そういった先生に相談してみるのも良いかもしれません。親も、親戚も、先生も、学生さんの味方です。特に男性は年長者に反発的な感情を抱く場合も多いと思いますが、ここはひとつ、大人になりましょう。
以下、自分のことで恐縮ですが、僕自身は、仕事上の大切な決断を行う際には、これまでいつも、信頼できるメンターに相談に乗ってもらってきました。自分の中で唯一自慢できる能力は、良きメンターに巡り合い、アドバイスを聴く能力だと思っています。もちろん最後は自分で意思決定するのですが、それでもメンターのアドバイスを聴くことはとても大切だと思います。

(6)入社後のほうが大切
就職活動において、企業研究はとても大切だと思います。ただ、同時にご理解いただきたいのは、どんなに頑張って企業研究を行っても、実際に働いてみなければわからないことのほうが、圧倒的に多いということです。
不安に駆られて、いくら調べてもわからないことに何か月も時間を使うよりも、自分の直観を信じたほうが良いかもしれないですよ。
入社後、自分自身が、実際にどう活躍するかを考え、そのために、学生時代の大切な時間を使うほうが賢明かもしれませんよ。そして、入社後に一生懸命頑張れば、その会社や職業のことが、とても好きになると思います。何よりも、一つの目標に向かい、一緒に働く仲間ができることは、とても素晴らしいことです。どの会社を選ぶかよりも、入社後にどのように頑張るかのほうが大切です。就職活動が成功したかどうかは、どの会社を選んだかではなく、そのあとの自分自身の努力次第だと思います。

(7)卒業研究はしっかりやろう
就職活動に没頭するあまり、卒業研究を放り投げてしまう学生を、これまで何度も見てきました。これは、とても勿体ないことです。
特に理系の場合、卒業研究は、仕事の基礎を身に着けることができる、実際に働く現場に近い体験です。卒業研究は、社会人になる最後のリハーサルです。しかも、(人間関係も含め)卒業研究は、失敗しても良いのです。どのみち、たったの1年(修士なら3年)で卒業です。なので、卒業研究でたくさん失敗しておきましょう。大丈夫です。学生が失敗することは、先生は重々知っていますから。。。
先輩や先生にサポートしてもらいながら、1つの問題にじっくりと取り組んだ経験は、生涯の宝物です。たとえ、違う専門分野に就職したとしても、必ず力のなります。試しに、「ベテラン社会人の先輩」に聞いてみてください。ほとんどが「卒業研究はしっかり最後まで頑張るのが良い」と言うと思います。実際のところ、卒業研究をしっかりやっている学生のほうが、就職もすんなり決まります。面接官の目はそこまで節穴ではないです。
そして、努力の甲斐があり、困難を乗り越えて、学会発表できる結果が出たら、ぜひ、学会で、将来就職する会社の先輩に、「来年4月からお世話になります」と挨拶しましょう。その先輩は、あなたのことを必ず覚えてくれていますし、入社後に応援してくれると思います。

最後に、Steve Jobs氏の言葉をお送りします。

Have the courage to follow your heart and intuition.
They somehow already know what you truly want to become.
Everything else is secondary.

それでは、皆さんのご武運をお祈りしております。

(*)ここに書いたのは、PCF-J組織委員の総意ではなく、単なる一人の意見です。