アセスメント6
2025-04-16

対象者の家族関係が把握できると、誰が鍵となる人物で力関係がどのようにバランスしているのか分かるようになります。何度も言いますが、要介護状態に家族の一員がなったということは一種の介護事故です。事故ですから原因があります。高齢者であれば慢性疾患を抱えている人は珍しくありません。そうした慢性疾患が悪化したのも一つの事故です。
高血圧症であれば、放置していると脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性があります。もしかしたら、そのように病状を放置して発症したのかもしれません。あるいは認知症ですが、これは多くの要因が関係しているので、一つの原因を決めることは難しそうです。例えば家族関係が悪化していて、同じ家にいても高齢者が孤立されていると疎外感が増して発症するかもしれません。あるいは長年降圧剤を服用していて、必要以上に血圧を下げすぎて脳に血液がめぐらずに発症するかもしれません。または、長年純度の高い植物油を取りすぎて神経細胞が痛んで発症するかもしれません。ほとんどはそれらの要因がいくつか重なって発症するのでしょう。
医療の世界でもっと予防医療が標準化されれば良いのですが、予防を積極的に行っているのはメタボ検診くらいでしょう。病気の原因を解明して予防医療が進めば、要介護者も減るはずです。それは今後の施策改善を期待しましょう。
このように介護事故が家族内で起こると、家族の関係性は変化します。例えば一家の柱であったご主人が要介護状態になれば、誰かの援助が必要な状態になります。ご主人がそうなると、それまでの一家の権威や権力が他の家族が代替する可能性があります。すると家族の力関係が変化して中心となる人が入れ替わるかもしれないのです。こうした変化をケアマネジャーは敏感に気付いて、誰が権威を持っているか、誰が権力を持っているか判断しなければなりません。権威と権力は違います。権威はその権限を認めている状態です。権力はその権限を行使する状態です。一家の代表者が夫で、妻がお金の管理をしていたりしますが、そのように分担している場合もあれば、権威と権力を夫や妻が独占している場合もあります。
ですから、ケアマネジャーは家族の中の力関係を冷静に分析して、決定権を持っているキーパーソンを見つけなければなりません。また、介護保険では利用者負担金もありますから金銭管理の実務をしているキーパーソンも見つけなければなりません。そうして初めて必要な事柄を伝えることができます。決定権のない人にいくらサービスの説明をしても無駄になる可能性があります。家族内での情報伝達がどれだけあるかも関係します。窓口がひとつであるのはありがたいことですが、その情報が家族全員に正確に伝わるかどうか判りません。それで、ケアマネジャーは毎回、情報が正確に伝わっているかどうか確認する必要があるのです。窓口も変わる可能性もありますし、家族の認知状況が変わる可能性もあるのです。毎回の訪問でアセスメントするときは、このことを頭の片隅に置いて、家族に変化はないか確かめるようにしましょう。