アセスメント31

2025-06-13

対象者とコミュニケーションをとるには、対象者の発声機能にも注意しましょう。
こちらの発言が理解されたとしても、発音ができない場合があるからです。イエス・ノーの簡単なコミュニケーションであれば、頭を振ったり、うなずいたりで判断できますが、対象者から質問をされても、その発音が不明瞭だと何を聞きたいのか分かりません。
それで、対象者の発音が明瞭かそうでないか、発声自体が難しいか判断する必要があります。
脳卒中で右片麻痺の対象者は、言語障害を伴うことがあります。これは左大脳半球に言語中枢があるからです。左大脳のどの部分の細胞が痛んでしまったかによりますが、大きく分けて1,感覚性失語、2,運動性失語、3,伝導性失語、4,全失語になります。
1, 感覚性失語は話の内容を理解することが難しく、言い間違えが多くなります。言葉は流ちょうに発声しますが意味不明な発音になることがあります。
2, 運動性失語は話は理解できても、発声がしにくいのです。流ちょうではなく言い間違えもあります。
3, 伝導性失語は音韻性錯語が目立ちます。錯語は正しい発音ができず、「めがね」を「めがれ」と発音し、直そうとしても直せないことがあります。
4, 全失語はこうした言語中枢が機能せず、コミュニケーションははい、いいえとか身振りとかで表現することに限られてしまいます。
このように対象者が、どの程度の発音ができるのかアセスメントする必要があります。特に全失語状態であると、コミュニケーション手段が限られてしまいます。聴覚が保たれていたとしても、理解度がどの程度か判断するのが難しいからです。
このような失語者については専門の言語聴覚士に判断を仰ぐようにしましょう。聴覚士は言語機能評価を行い、問題の特性を明らかにしてくれるでしょう。そして適切な訓練プログラムを提案してくれると思います。ケアマネジャーは問題の特性を理解したうえで、コミュニケーションの方法を考えてゆけば良いのです。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方の場合も、コミュニケーションが段々難しくなることがあります。進行性の病気なので、会話ができていても徐々に難しくなります。最終的に眼球だけが動かせるだけになることもあります。その前に会話補助装置を導入するでしょうが、眼球の動きを捉えて文字盤から音声合成する装置もあります。ALSの方は身体の自由が利きませんが、精神は全く障がいがないのです。ですから、コミュニケーションができないことはとても辛いことになります。頭の位置を直すことも自分では難しくなり、かゆい場所があっても自分ではかけません。
コミュニケーションに課題がある場合は、専門家の意見を聞いて、適切な補助装置がないか尋ねましょう。一人一人で会話のスタイルも違うかもしれません。適切なコミュニケーションが図れるように、ケアマネジャーは考えましょう。